表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
第二章 あれはあの日の流れ星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/50

あれはあの日の流れ星 9

「みさと……さん」


 バーニングリーン――風祭侑夏が私に気付いた。弾かれたように、私は動いていた。彼女に駆け寄り、震えるその手を掴む。


「侑夏――」

「あいつ……やばい……わたしたちじゃ……勝てない」


 私は黙ってその手を握り返す。何かを言わなければいけないのはわかっている。だが、頭の中に浮かんだある事が離れない。

 まさか。


「夜見さん!」


 泉君がバーニンブラックに肩を貸していた。スーツへのダメージから、彼がどれほど戦ったのかがわかる。ブラックの反応は薄い。危険な状況だ。


「お前は……誰だ」


 バーニンレッドがキャンドルブレードを構えて言った。ついさっき大量のバーニンを使ったというのに、彼のバーニンは減るどころかむしろ増え始めているようだ。驚くべき潜在能力だが、私の意識は異形の剣士へと向けられた。

 あの剣は――


「ジャンク・ザ・ジャック。ただの用心棒だ。お前らの始末を仰せつかったのでな。仕事を果たさせてもらう……ところで、ロック・ロック・プリィズンを見なかったか? 岩石のような男だ」

「そいつなら戦ったあとに逃げたよ。そんな事より、よくも僕らの仲間を……!」


 ジャンク・ザ・ジャックと名乗った剣士は、バーニンレッドの怒りなど塵ほども気にしていないようだった。


「あいつめ。ギャンギャンスタンプの反応はまだある……という事は余力を残しながらも逃げたな。これだから犯罪者という奴は信用ならんのだ」

「お前らの事情なんかどうだっていい! ここでお前も倒してやる!」

「――灯火君」


 侑夏を横にさせ、私はバーニンレッドの背に声をかけた。立ち上がり、彼の横に立つ。


「君は侑夏をお願い。ここは私がやる」

「……でも!」

「悪いけど、これは譲れない。私には確かめる必要がある」


 努めて冷静に、私は言った。

 剣士の視線が、私に移った。


「お前が例のバーニンピンクか。シュレッダ・ザクギリーを倒した腕前、誉めてやろう。せいぜい楽しませてみせろ」


 怪人剣士がそんな事を言った時には、私はすでに走り出していた。バーニンによる加速。レッドだけでなく私自身のバーニンも急速に増加している。


「ふん――」


 エンゲイジアックスの初撃は、あっさりと異形の剣に防がれた。間髪入れずに攻撃を続ける。袈裟斬りから胴体へ。足払いを混ぜ込みながら下から上へ斬り上げる。敵の剣捌きに乱れはない。こちらの連撃の合間に、鋭い突きや斬撃を差し込んでくる。

 この太刀筋――相手の油断を許さず死へと誘うこの剣。


「ふっ――」


 宙返りして、私は距離を取った。異形の剣士は特に追ってくる様子もなく、こちらの出方を待つつもりのようだ。


「どうした。今のが全力ではあるまい。どうせ死ぬのだ。全てを見せてみろ。そうでなければ、こんな星に来た甲斐がない」


 ああ、こいつを知っている。

 私の記憶に、こいつの事が今も焼き付いている。


「……ガルドラン(・・・・・)


 二度と口にする事はないと思っていた名前で、私は剣士を呼んだ。


邪装騎士ガルドラン(・・・・・・・・・)。私を覚えているか」


 剣を持つ手は微動だにしなかったが、奇妙な沈黙があった。異形の剣士が纏う気配が変化していた。


「……姫木さん?」


 灯火君の問いかけに、今は答える余裕がない。


「……どこでその名を知ったのか知らないが」


 ジャンク・ザ・ジャックと名乗った剣士は、ようやく答えた。


「俺の名はジャンク・ザ・ジャック。バーニンピンクとやら、お前の事など知る由もない。その蒙昧な口、今すぐきけないようにしてやる」

「その剣には覚えがある。あくまでも(しら)を切るのなら――」


 私は、素早くクリスタルを三回タップした。


『バニバニバーニン!』

「ふっ――」


 バーニンを満ち溢れさせながら高速移動。息もつかせぬ連続斬撃を叩き込む。剣士は相変わらず的確に、私の斬撃を素早く防ぐ。だが、私の狙いは連続攻撃じゃない。バーニンによる加速。相手の肩を蹴り、一気に跳躍。高く舞い上がる。


「銀河烈光――!」


 私は叫んだ。エンゲイジアックスを振りかぶる。隕石の如きスピードで大地が迫る。敵の姿が迫る。身体に纏う超エネルギーを駆使するこの一撃は、エネルギーによって形成された流路が敵をその場に押し留め、例え躱されようとも衝撃波が追撃する。私が十年前に伝授された絶対の一太刀だ。


「ぐぅっ――!」


 剣士が、迎え撃つ体勢に入った。


「秘剣・流れ星!」


 斧の刃と異形の剣が激突する。発生する衝撃波が逆巻き、バーニンが音を立てて炸裂する。

 土埃が、二人の姿を隠していた。

 私は立ち上がる事ができなかった。着地の寸前に浴びせるこの秘剣は、絶対に相手を行動不能にさせるための攻撃だ。こちらも全力を使うために、すぐに動く事などできない。

 剣士は、しばらくの間呆然と立ち尽くしていた。金属の被膜が掛かっていた異形の剣から、被膜がひび割れて落ちた。柄の部分に、女性的な顔の彫刻が露出する。


「この技……」


 ジャンク・ザ・ジャックと名乗る剣士が、今度こそ動揺した声を出した。


「まさか……そんな。この技の使い手は消えたはずだ。あの宇宙の暗闇に」


 剣士は、もう一度私の顔を見た。

 立ち上がる。剣士に、私の姿を見せるために。忘れたとは言わせない。十年前。あの日の戦いを。戦いの末路を。

 戦いの果てに散った者を――


メグルン(・・・・)……ピンク(・・・)


 剣士の、襤褸のようなマントがはためいた。


「まさか……お前なのか」


 バーニンが再び巡っている。戦える。まだ。私は、戦える。


「思い出したようだね。私の事を」


 私は、斧を相手に突きつけ、言った。


「邪装騎士ガルドラン。お前には、聞きたい事が山ほどある」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ