表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

06 幕引き


「襲撃を未然に防げなかったか」


 国王の口が重い。


 いつもは派手な雰囲気の国王執務室も、空気が重く沈んでいる。今は、国王と私の二人きりで、少し緊張を緩めている状況なのに。



「申し訳ありません」


 私は、襲撃を防ぐ責任者ではないが、国王を危険にさらした責は負わねばならない。



「いや、アルテミスを責めているわけではない」


 国王に届いた報告では……


 救護室の少し硬いベッドで横たわる伯爵は、命に関わるキズではなかったが、口を閉ざしたまま、何も答えないそうだ。


 投獄された男爵は、何も記憶がないと、喚き散らしているそうだ。


 そして、狂った護衛兵や貴族たちも投獄されたが、会場での記憶はないそうだ。


 不思議なのは、公爵と聖女に、ケガひとつないという事だ。まるで、襲撃内容を知っているかのように、会場から逃げ出せていた。



「集団を魅了したことから、犯人はS級魔導士だと思われます」


「しかし、会場の中にS級魔導士はいませんし、そんな膨大な魔力も感じませんでした」


 私の考えを国王へ報告する。



「ただ、集団が魅了される直前、私には、耳障りな高音が聞こえました」


「耳障りな高音? 聞こえなかったな」


 現場にいた近衛兵にも聞いたが、私以外には聞こえない高音だった。


「それが引き金になる『深層魅了』だと思われます」


「深層魅了? 聞かない言葉だな」


「何らかの方法で、自分自身が認識できない深層へ、魅了魔法を隠しておき、引き金によって発動させる禁呪であります」


 そう、「禁呪」である。


 クーデターや集団テロなどの組織的大規模犯罪に使われる恐れがあるため、一般には知られていない技術である。一説には、異世界から来た技術だと言われている。


「隠すための何らかの方法とは?」


「不明です。今後は、そこに焦点を当てて捜査することに致します。まずは、伯爵と男爵を尋問する許可をください」


「分かった、許可する。くれぐれも、危険のない範囲で行なうのだぞ」


 国王の心遣いが、身に染みる。



  国王とは、王立学園の高等部の同級生だ。


 私は友好国からの留学生であり、何も分からない私を気にかけてくれ、卒業後の王宮メイドの職を世話してくれたのも、彼だった。


 二年前、彼も流行り病にかかってしまった時、私が闇属性魔法で治癒したことから、私たちの距離は急速に縮まった。


 彼は、十九歳という若さで国王という地位に就き、激務をサポートして欲しいと、私を専属メイドとしてスカウトした。


 専属メイドは、通常のメイドのように生活をサポートするのではなく、特殊な仕事を担当する、いわば便利屋だ。


 友好国で、中等部まで執行聖女になるために修行したが、まさか、メイドになるとは思っていなかった。


 彼のスカウトが無ければ、今頃は、友好国からもらった聖女の称号で、諸国の教会や聖堂をめぐって、布教活動をしていただろう。


 ◇


「コンコン」国王執務室の扉がノックされ、近衛兵が入ってきた。


「国王陛下に緊急の報告です。救護室で治療中の伯爵様と、投獄中の男爵が、息を引き取りました」


「!……」


 犯人へと、つながる糸が切れた。


「詳細は調査中ですが、刺客の仕業だと思われます」


 やられた……王宮に忍び込んだ犯人は、よほどの大物だ。




お読みいただきありがとうございました。

よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ