仮タイトル アレ カナヤマ編終
前任の山下はエリアから直接病院へ運ばれたのだが、既に衰弱が酷く入院して3日後に亡くなった。
「確か赴任して2年半だったよな」
「はい。最長です!」
「内臓は全て腐敗が進んでしまっている。まぁこれじゃとても助からない・・」
「今度新たに赴任した人はどれくらい持つんでしょうかね」
「さぁな。体力に自信があるってやつが着任したって聞いたけど」
「なら無事に任務を遂行できるかもしれないですね」
「体力なんて関係ないだろそれよりもいかにあのエリアに行かないでいるかだよ・・・」
「他の職員は1ヶ月したら強制退職させられてそのまま行方不明ですからね・・・」
「私達もあまり深入りしないほうが正しいな」
「はい。そうですね」
カナヤマが着任して3日目の朝を迎えた。カナヤマの起床時間が日に日に遅くなり職員が作業開始をして3時間未だにベッドから起きていなかった。
「所長12時ですがいかがなされましたか・・・」
職員の内線での問い掛けにカナヤマからの応答がなかった。
(カナヤマ所長・・・)
職員が所長室に向かい金山を呼んだ。
「所長失礼します」
所長室の執務室にはカナヤマの姿はなかった。
プライベートルームの部屋の扉をノックするも返事がなかった。
「所長入ります」
一声かけて部屋に入った。
「所長起床時間とっくに過ぎてます。起きていただけますでしょうか」
職員がカナヤマのベッドの掛け布団を捲ると真っ黒に炭化したカナヤマの遺体が転がっていた。
「うわぁ!・・・あれほど言ったのに・・・まぁ自業自得ってやつか・・・本部に報告だ」
程なくして本部から遺体を引き取るための輸送ヘリが準備されたが、急な対応のためヘリコプターのスケジュールが取れずさらに3日の時間が過ぎた。
「この遺体を棺に入れて保管しておこう」
別の職員二人が金属製の立方体の箱を持ってきた。
「うわぁ・・あの筋肉の塊がここまで・・・」
真っ黒に炭価し骨に黒く干からびた皮膚がはりついた金山の遺体は見る物を呆れさせた。
「よし優しくケースに運び入れよう」
「そーと、そーとだぞ」
「ぎゃ」
「どうした?」
「すみません。軽く持っただけで砕けて粉々になってしまいます」
「全く!ほんと迷惑な話だ。よしシーツをベッドから切り取ってシーツごとケースに入れてしまおう」
バキッ
「あーだめです?ちょっとの衝撃で粉々になってしまいます」
「・・・ではシーツをこれに被せて全部粉々にして何か小さな箱にでも入れてしまおう。お願いできるかな?」
「その方が助かります。こんなの形を残せって言われても、無理なんで」
「ヘリは必要なくなりました。カナヤマ所長の遺体はボロボロに崩れてしまいました。とりあえずこなごなになった遺体はケースに入れて保管しておきます。我々通常に戻ります」
「了解した。早急に新しい所長を送る。それまで各員しっかりと健康管理をして作業に携わってくれ」
本部からの指示を職員全員に一斉送信した。
珍しく職員から笑い声が上がっていた。
「カナヤマって奴3日だったって。俺たちはこれだけの防護服を着ていても健康不安があるのにあいつは筋肉が防護服だって言ったよな」
「ハハハハハ自ら立候補して着任したって話だったよな!」
「気をつけろって身をもって指示してくれたんだよハハハ」
「さぁ作業しよう」
「どういう事だ。カナヤマはなんであんなに持たなかったんだ」
「はい。なんでも防護服の着用を頑なに拒んでいたそうです」
「・・・」
「着任の挨拶でも普段着のままAブロックに向かい、『自らの防護服は筋肉』だと!言ってたそうです」
「カナヤマって奴はなんで立候補したんだ?あのエリアについて知ってなかったのか?こう言っちゃなんだが筋金入りの・・・・バカだったんじゃないのか・・・」
あまりにもイカれた行動に仲間や組織からバカ扱いされてしまった。
「さてこれからどうするかだ。ところでカナヤマのデータって取れてるだろうな」
「はい。非常に短い時間でしたが、防護服を着用していない事でより詳しいデータが集まりました。残念なことが一つ」
「なんだ?」
「カナヤマの遺体回収ができなかったのです。わずか3日で死亡した上に回収までに遺体が炭化して粉々になってしまいました」
「・・・炭化してしまった物の成分調査はできるのか」
「ただいま手配をしているところです」
「我々も大変なものを発掘してしまったものだな・・・」
「ただ見守るしかないのです・・・」
「全くだ。最小限の被害で抑えるために日々防護壁の建設とアレから出る成分データの解析・・・たったそれだけの事をするために今までに何人の犠牲者を出したんだ」
「・・・・数え切れません。所長クラスだけでも20名を超えています・・・まぁカナヤマさんを所長にカウントするかは疑問ですが・・・」
「再度アレの取り扱いについて見直しが必要だな・・・」
カナヤマの自爆から1ヶ月が経ったが、いまだに所長の人選は進んでいなかった。その間本部はアレの取り扱いについて1から見直すため過去を遡って一から検証していた。