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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血鏡

作者: AO

今日地区の夏祭りに行って来ましたー。

歳があまり離れてない(と勝手に推測)のに彼女いる人がいてすごい驚きましたねー。




「クソッタレ!なんであんなにカップルが多いんだよ!」

御津 凌がそう叫ぶのを、俺は黙って聞いていた。

「嫉妬すんなよ見苦しい。夏祭りなんてそんなもんだろ。」

俺はそう言った後、確かに異様なほど男女組が多かったなと思った。

あの中で男二人、しかも365°に嫉妬と敵意をむけているやつを率いていたのだから、さぞ浮いていただろう。

こんなことなら天野を連れてくればよかったが、彼女は怪談集めに忙しい。

今どういう状況かというと、御津と古神と俺で夏祭りに行ってきた。

その帰り道である。

古神は家の方向が逆だし、天野は先述した通りだし。

「あーほんとにさ、こんなんなら夏祭りなんてなくなっちまえ!女子を抱けない劣等感しか抱かない!」

「キモすぎない?今の発言。」

彼がこんなにご立腹なのは、決してリア充オーラに犯されたから、だけではない。

射撃、スーパーボール掬い、水風船、掴み取りetc…様々な競技で俺と古神にボコボコにされた挙句、完全な運であるくじでさえ6等とかいう資源ごみを引き当ててしまったからである。

「家に帰ってキュッと飲まないとやってられないよなあ!今日家に泊まんない?」

「おっさんかよ…。徹ゲーするか?明日学校だけど。」

世間一般では夏休みという生活リズムが一気にニート化する怪奇現象が起きているらしいが、俺たちの学校はなぜか課外という授業がまだ続いている。

「あのリア充の巣窟から早く離れようぜ。当てられる。」

そんな時。

「じゃあ、今日は楽しかったよ。」

そんな声が聞こえた。

すぐそこの通路にいるらしい。

角からそっと覗く。

高校生くらいの1組のカップルがいた。

「うん、俺のほうこそありがとう」

男がいう。

「けっ」

御津が吐き捨てた。

月に照らされた顔が「私は不快です」と叫んでいる。

「ほら、帰るぞ」

と俺は促したが、御津はその手を払った。

「なんかいい雰囲気だから動画撮る」

「正気か?」

「うん。」

と御津がいい、本当に動画を撮り始めた。

「おい…」

「お前あいつら知らないのかよ…

最近話題になってる赤城と若水だよ」

どうやら同級生らしい。

俺の交友関係が狭すぎて気付かなかった。

「まさか付き合っていたとはな…

記念写真を撮ってやろう…

若水のやつ…修学旅行ではまだ全然とか言ってたくせに」

「すごく気がきくね。いつか彼女ができるんじゃねーの?」

俺は皮肉を言ったが、ネットにあげないなら別にいいか、ということで放っておいた。

「赤城さん…」

若水の声が聞こえる。

「おお…重い思いが詰まっている…」

どうしてこいつはこんな雰囲気ぶち壊しのことばかりいうのだろう?

後ろでは花火がパッと上がり始めた。

おお…いい雰囲気。

二人の距離がゼロになった時、一際大きい赤い花火が空に上がり、バン、という大きな音を出した。

その下では、真っ赤に染まる二人がいた。

二人を染めるのは、羞恥か、嬉しさか、花火の光か、それともー


俺は御津の口を押さえて、通路の角に隠れていた。

御津は少しも動かずじっとしている。

パーカーのフードを目深にかぶる。

御津には、射撃で当てたサングラスをかけさせた。

どく、どく、と心臓の音が聞こえる。

それに混じる、遠くで花火が弾ける音。

花火の下で、赤く鋭くナイフを持ったまま立っている若水。

赤城の体からは血が滴り、マンホールに血の鏡ができていた。

彼は、キョロキョロした後その奥の深い暗闇に消えていった。


その後、俺は家に帰った。

妹の絳にお土産としてくじで当てたゲームソフトを渡して、ベッドに倒れ込んだ。


3日後。

課外の終了一日後のことだった。

俺、御津、古神は若水の家に来ていた。

理由は、「泊まって行ってほしい」と若水が御津に言ったからだ。

「なんかすごい不吉な予感がするんだよ。」

俺は特に面識もなかったが、

「ああ、君が…。どうぞよろしく。」

と言われただけだった。

「なんか誰かに見られてる気がするんだよ。」

と若水が言う。

「へー」

時刻は11:30。

俺と古神は相槌を打ちながら、トントン机を打って会話していた。

コンビニ行ってくるけど何が欲しい?

と俺が打つと、

ジュース

と古神が返した。

モールス信号だ。

若水の話が一通り終わったところで、俺はコンビニに出かけた。


俺が帰ってくると、

「うわあああああああああああ!!!」

と半狂乱の顔で駆けていく若水にすれ違った。

その後ろを、凄まじい顔をした足が8本あるただの化け物が追いかけて行った。

いやはや、すごいものだ。

と俺は感心した。

若水を警察に突き出す前に、天野に怪物のコスプレをして脅かしてもらうことにしていたのだ。

それにしてもまさかあそこまでとはな。

正真正銘、化け物にしか見えない。

そう思いながら俺は家に戻った。


帰ると、古神が変な顔をして立っていた。

「いやー、すごいな。あいつの演技力には驚かされたぜ」

と古神に言うと、

「いや…それなんだが。俺がロッカーに隠れてた天野さんを呼びに行き、御津がトイレに行ってる間に、若水がどっか行ったんだよなあ…」

は?と俺は愕然とした。

じゃあ、さっき俺がすれ違ったのは?

「先輩、私こんな服着たくないんですけど。」

と天野が起こったように言う。

とりあえずジュースを渡して機嫌を直す。

「わーい」と喜んでいる天野を尻目に、俺は玄関を再び出た。

若水を探す。

だが、どこにもいなかった。


数日後。彼は四肢を引き裂かれた状態で、マンホールに挟まっていた。


読んでくださってありがとうございました。

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