心配したんだから 1
「バカ!!バカバカバカ!!!」
私が毛嫌いをしていたクラスメイトの佐伯は。
私と違ってかわいくて小さくて優しくて勉強ができて。
守ってあげたくなるって表現がきっといちばん近い。
「なんで!!何でこんな雨の中で屋上で倒れてんのよ??
泉野さん!!聞いてんの??」
「うるせ!!」
私はずぶ濡れで。
でも彼女はもっとずぶ濡れで。
本当は礼を言わないといけないはずの。
この唇で。
私は悪態をついていた。
「なんで助けたんだよ!!
私は死にたかったんだよ!!
余計なことしやがって!!」
その時。
私の頬が激しく音を立てて。
私は佐伯に殴られた。
そう気づいたのは。
一瞬遅れてだった。
「呼んでも気づかなくて!!
ずっとずっと呼び続けてたのに!!
何でそんなこと言うの??」
私を殴ったその手は。
それからまた私を抱きしめて。
「泉野さんが死んじゃったかと思ったんだから!!
ふざけたこと言わないでよ!!
死にたかったとか!!」
佐伯凛子のその声に。
私は苛立ちを覚えて。
「佐伯に何の関係がある??
いい子ちゃんは私になんか関わるなって言われてるだろうが!!」
私と佐伯凛子とは。
幼馴染だった。
そして。
私とは正反対のいい子ちゃん。
私はそれだけで佐伯凛子を毛嫌いしていた。