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その3

いやいやいや、いい話みたいに話しているけど、それでは護邸常務は納得しないでしょ。ほらやっぱりいい顔していない。


だってそれでは、悪いのは課長独りで、私やスズキさんは被害者になってしまう。

副社長派は、こっちは被害者だお前の方が悪いって、それこそ監督不行き届きで、護邸常務だけの責任になってしまうもの。


護邸常務のアキレス腱は、企画部長が不在ということだ。私は来る前だから詳細は知らないけど、今は護邸常務が企画部長兼任でやっている。

だから課長の不始末は、部長兼任の護邸常務になってしまう。


千秋は、ややこしい事になったと頭を抱える。


目標は横領の濡れ衣を晴らすこと、勝利条件は悪印象を与えずに課長の仕業と伝えることだったのに、このままでは課長はもちろん、護邸常務まで責任をとらされてしまう。


そうなれば、企画部の大編成がおこなわれるのは間違いない。企画3課を全員リストラさせるという目も出てくる、まずい。


「今までの会話の流れで分かったと思うが、葉栗副社長達は、横領の罪を企画3課にして、その責任者たる私のダメージか、あわよくば失脚を狙っている」


「横領したのは企画3課長なのは確実だから、無傷ではすまない。しかし、向こうも経理の見落としというウィークポイントがあるから、我々はそこを責める。その事を覚えていてくれたまえ」


護邸常務の言葉がよみがえる、何とかしなくては。

しかしどうする? 私に発言権はあるのだろうか、あったとしても影響はあるのだろうか。


ちらりと課長とスズキを見る千秋。2人は立っているが、千秋は座っているので、見上げるかたちとなる。


俺は今、男気出して格好いいぞ、みたいな顔をしている課長にイラっとする千秋。その向こうでクシャクシャな顔で泣き続けているスズキの顔が見えた。


「あっ!?」


会議室に響くくらいの大きさで千秋は声をあげたので驚いて皆が千秋に注目する。


「佐野君、どうかしたのかね」


「いえ、すいません。失礼しました」


千秋は席を立ち、頭を下げてお詫びをすると、ふたたび座りなにやら考え始めた。


 会議の流れは一旦とまったが、葉栗副社長派はこの機会を逃すはずなく、ふたたび攻撃を始めた。サトウ課長には何度も同じ質問をし言質をとり、その度に護邸常務にどう責任とるのか訊いてくる。


 護邸常務はそれをかわしながらスズキに質問するが、泣いてばかりで要領を得ず、このままでは押しきられる、そんな状態になったとき千秋が挙手をした。


「護邸常務、報告漏れがありました」

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