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主役は誰

「先週の木曜日に護邸常務から呼び出しがあり、事の次第を伺いました。まったく身に覚えがなく、尚且つ領収書等の資料を見させていただくと、自分がまだアメリカにいる日付の領収書もありました。明らかに私の名前を騙った人がいます」


「たしかにな。まだアメリカ本社勤務の時の、佐野主任名義の領収書がある。経理は何をやっているのかね、大鳥常務」


 早田専務が訊くと、大鳥常務が口ごもる。どうやら大鳥常務は経理部門担当らしい。

  隣にいる課長と経理のコとの、不倫関係を私は知っている。大鳥常務はどうだろう、知っているのだろうか。


「企画3課長、サトウくんだったね。経理は君の決裁の印が入っていたので通したんだ。どういう事かね」


あ、矛先を課長に向けた。どうするんだろう、何か上手い言い訳でもあるのかな。


「決裁のとおりです。佐野主任が経費として遣いました。私も裏切られました」


「はあ!?」


場所も忘れて、思わず千秋は大声を出した。


「き、君がかならず仕事に繋がるから、と言ってきたんじゃないか。だから私は君の言葉を信じて……」


「課長、今の話を聴いていました? 私がまだ赴任していない領収書まであるんですよ」


「それは何かの手違いだろう。それ以外は君が遣ったんじゃないか。君だ君だ、みんな君が遣ったんじゃないか」


子供か。


親に悪戯を見つかって言い訳する、しかも幼児並みの言い訳だ。そんなのが通じると思っているのか。


「なるほど、手違いか。それは経理のミスだな、大鳥くん」


諸星専務が、大鳥常務に有無を言わさぬ口調で問うと、忖度した大鳥常務がミスを認め謝罪する。


「しかしそれ以外は佐野主任なんだなサトウ課長」


「はい、そのとおりです」


通じたー、何なんだこのやり取りは。


「諸星専務、いくらなんでもそれは暴論だろう。他のものも精査した方がいいんじゃないのかね」


「早田専務、それでは時間がかかるのではないですか。サトウ課長もミスを認めたんだ。会議を迅速に進める為にも、ミスを認めたサトウ課長共々佐野主任に責任をとってもらおう」


「ひぃ」


サトウ課長が悲鳴をあげる、まだ助かるつもりだったのか。それとも助けてもらうつもりが見捨てられたのか。その時、護邸常務が発言した。


「僭越ながら諸星専務、会議を迅速に進めるのもよろしいですが、正確さも必要だと思います。再度調べ直してはどうでしょう」


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