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その3

 9時5分前にエレベーターの扉が開くと、護邸常務が降りてきた。わりと几帳面な性格みたいだな、そう思いながら近づいてくる常務に、立ち上がって挨拶をする。


「おはようございます、常務」


「おはよう、休日はいろいろあったみたいだね」


「いえ、コンペの下準備をしていただけです」


「なるほど。もうひとつの方はどうなっている」


「資料を揃えました」


「わかった、さっそく見せてもらおうか。着いてきたまえ」


護邸常務に着いて常務室に入ると、秘書も一緒に入り、常務と秘書はそれぞれの席に着く。

千秋は机を挟んで常務の前に立つと、手に持っていた鞄から資料を取り出し、常務に提出する。

常務はそれをひとつひとつ確認しながら目を通す。


やがて顔をあげると、


「よくやった。木曜日に始めたのにここまで調べたのか、これなら君の横領疑惑は晴らせるな。それにしてもよく出来た資料だな、君が作ったのか」


「いえ、塚本が作りました」


「塚本というと経理にいたコだったな、たしか。なるほど」


資料を見返しながら感心する。


常務は秘書に声をかけると、資料のコピーを頼み、秘書が部屋から出ていくと、常務は千秋に向かい重い声で話しかける。


「企画3課長の横領は決定的である以上、責任をとってもらう事になるだろう。彼は何故そんな真似をしたのかまで君は調べたのか」


千秋は迷った。


経理の女性社員と不倫をしていて、それをネタに群春物産のキジマにゆすられていた、と伝えるべきなのだろうか。


しかし、まだ不明瞭な点がある。


課長がゆすられていたのは、コンペどころか、千秋が来る前からである。

そんな頃からキジマが課長を、何故知っていたのだろう。


はっきりとしないうちは、言わない方がいいと判断し、常務には分からないと答えた。


コピーを終わった秘書が資料を持って帰ってきたので、一部を千秋が持ち、残りを会議用にまとめる。


その作業が終わると、千秋は企画3課に戻る。時刻は10時を少しまわっていた。

企画3課のシマには、一色と塚本それに課長がいた。

すました顔で仕事をしている一色達に対し、何も手がつかず蒼白で汗をたらしている顔の課長が対照的だった。


千秋は3課のシマに来ると、課長に対し挨拶をした。


「おはようございます、遅くなってすいません」


下を向いていた課長は、千秋の声に驚き顔を上げる。

何事もない顔で微笑む千秋を見て、ひきつるように顔を強張らせた。


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