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その2

(アメリカで聞かされた話とほぼ同じだな、ということは信じてもいいだろう。ウチと財団は長い付き合いのうえに、深い関係なんだ)


「それなのに他社と競合させるんだ」


「当然でしょ。長いつき合いは馴れ合いという淀みを生むわ、健全な商売は常にしのぎ合うものよ」


「そうね、となるとコンペをする事自体は怪しくないか」


「そうでしょうねぇ、怪しい真似なんて魁山先生が許さないでしょうしね」


「お祖母ちゃん、魁山を知ってるの」


「まあ歳がちかいからね、お互い大変だったから若い頃は知らないけど、歳を重ねてからは時々会っていたわねぇ」


「何それ、知らないんだけど」


「千秋は会った事ないし、咲子は小さかったから覚えてないかな、抱っこしてもらったことあるんだよ」


「へぇ、知らなかった」


「そうそう、小さいで思い出したんだけど、森友あそこ独特のシステムがあるのよね」


「どんな」


「私塾というのかな、通称[魁山塾]という教育機関があってね、そこで魁山流の知識、理念、思想を叩き込むの。それから財団のグループ会社に勤めるんだって」


「社員、全員なの」


「そうらしいよ、中途採用された人と話したことあるんだけど、面接したあと魁山塾で会社の流儀を叩き込まれたんだって」


千秋と母《咲子》の話が盛り上がっているのをよそに、祖母は食事の後片付けをはじめる。


「あ、中途採用やっているんだ。教育機関があるなんて言うから新卒しか雇わないかと思ってた」


「ん~、と、それに関してはなんか複雑らしいわよ。見えないヒエラルキーがあるんだって」


「見えないヒエラルキー? 派閥争いみたいなもの?」


「に、なるのかなぁ。その中途採用の人が言うにはね年下で役職も下の人に、管理職の偉いさんが気を使って話している場面をけっこうみかけるんだって」


千秋はコンペの場面を思い出した、たしかにそうだ。


「なんでそうなのか、その人は知ってるの」


「ううん、もう辞めちゃったから。[俺の実力じゃ入社はいれても続けられなかったよ]ってね」


千秋はがっかりした。たぶんそれが奇妙な人間関係のヒントになると感じたのに。


「そんなの不思議でも何でもないわよ」


洗い物がおわり、お茶を淹れ直して席に戻って座った祖母が、ぽつりと言った。


「[カロイト学園の子]達の事よ」


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