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母は自慢げに助言する

「何やっているのよ、お風呂で溺れるなんて小学生みたいなことを」


「ちょっと考え事をしてたのよ、鼻に湯が入っただけじゃないの」


「まあまあ、私が騒ぎすぎたのよ、もういいじゃない」


 祖母のつくった夕食が並んだ食卓を囲んで3人の女が姦しくしている。千秋と母と祖母の3人だ。


 先に述べたが、千秋の母はベンチャー企業の経営者である。社員も何人か雇っていて、業績もそこそこ良い。

 とはいえまだまだ経営年数は短く、安定しているとは言い難い。だから社長みずから現場で陣頭指揮をする事が多く、会社の誰よりも働いている。

 そんな訳で、なかなか家族3人が揃うことはなかったが、今日は一週間ぶりに揃って食事をする事ができたのだった。


「仕事大変なの」


「まあね」


まさか襲われそうになったなんて言えないので、曖昧に返事をする。


「でもひと山越えたみたいよ、ちょっと落ち着いたから」


自分の作ったお吸い物を美味しそうに飲みながら祖母は言う。千秋はドキリとした。


(お祖母ちゃんはまるで超能力者のように心を読む。だから隠し事は出来ない。さすがに襲われた云々は話せないけど、安心してもらうためにも、何があったか話そう)


千秋は最近の出来事を大まかに、祖母と母に話した。


「ふうん、そんな事になっているの」


「森友財団とあんたの会社の間柄は知っているけど、状況が変わってきたのかな」


「母さん、何か知っているの」


「あんた自分の勤めている会社の事でしょ、エクセリオン日本と森友財団て、ものすごい信頼関係で結ばれているのよ」


「そうなの? だって私はアメリカ本社勤めだったし、日本に来て半年だもの。どうしてそんな関係なの」


母はお茶をすすると、ひと息ついてから話し始めた。


森友魁山もりともかいざんって知ってる」


「たしか壱ノ宮の偉人さんでしょ、小学生か中学生の時に副読本で読んだことがある」


「そう、経済人であり、政治家であり、芸術家でもある人よ。今日の壱ノ宮があるのは、彼抜きでは語れない程の人」


「森友財団の創始者だよね」


「戦後の混乱期にいち早く復興したのは、魁山がアメリカから優先的に物資を仕入れる事が出来たからなの。なんでそうなったかというと、エクセリオンの創始者と魁山は戦前からの知り合いでね、戦争の為に敵味方に別れたけど、その友情は切れてなくて、戦後に再会した時に互いに助け合って今日に至るってわけ」


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