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その4

「出来レース。どういう意味ですか」


「キジマがね、こう言ったの[てめえがいなきゃ名古屋でほとぼりが冷めてから東京本社に戻れたんだ、コンペだって出来レースだったんだから何もしなくても勝てたのに、てめえがしゃしゃり出てくるから]って」


「え、え、あのコンペが出来レースだったというのですか」


「そうみたいね」


「だったらおかしいですよ、だって出来レースならチーフが何を言おうと向こうのプレゼンが通る筈です。なのに実際はチーフの言葉で延期になったじゃないですか」


「そう言えばそうね、あれ、話が噛み合わない」


「キジマは本当にそう言ったのですか」


「うん、あたまに血が昇ってキレ気味になって言ってたから本当だと思う」


「となると、一体……」


 2人は無言でしばらく互いに考えたが、答えは出てこなかった。


「ダメだな、答えが出てこない。明日会社に行く前にまた会わない」


「そうですね、じゃあまた7時半に同じ喫茶店で」


約束を済ませ通話を切ると、千秋は起き上がり、シャワーを浴びにいく。


「あ、起きたの」


「うん、シャワー浴びてくる」


「そんならお風呂に入っちゃいなさい、湯は張ってあるから。そっちの方が疲れがとれるよ」


「ありがと、お祖母ちゃん。母さんは?」


「仕事だって。なにも日曜まで働かなくてもいいのにねぇ」


「仕方ないよ、ベンチャー企業の経営者って社員以上に働くからね」


「そういうもんかね」


 祖母はため息をつくと、居間に戻った。千秋は脱衣場で脱いだあと、身体を洗い湯船に浸かり ほうとため息をだす。湯に浸かりながら考える。


もともと何でコンペがもうけられたのだろう。本社から日本支社に行く前に教えてくれたっけ。


「日本支社は本社からすると地球の真裏で地理的には一番遠い、だが心情的には一番近い支社なんだ。なぜなら……」


会社エクセリオンの前身はケンタッキー州の片田舎にある雑貨屋であった。それを現社長の祖父である初代社長が、第二次世界大戦後せんご日本製品や商品を輸入して売る方針に変えて利益を上げ、今日の会社の礎をつくったという。


「だから日本支社は一番古くからある支社なんだ。それにその時の取引相手が……」


壱ノ宮に本拠地がある[森友商会]、現森友財団だという。となると会社エクセリオンと森友財団との付き合いはかなり長い。というか言葉は悪いがズブズブの関係であるはずだ。

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