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その2

 キジマの動きに気をつけながら、千秋は話を続ける。


「父親の気遣いをあなた達は何も感じなかった。だから名古屋でも同じような事をしたのね」


「そうか、リンチョウの奴が喋ったんだな」


キジマはポケットからスマホを取り出すと、操作をはじめる。


「裏切ったらどうなるか、思い知れ」


卑しい顔をしながら操作を続けていたが、ぎょっとした顔に変わる。


「な、なんでだ。データが、データが無いぞ」


ハッとしてキジマは千秋を見る、千秋はニヤニヤしていた。


「てめえかぁぁ」


「何の事かしら、いかがわしい動画データなんて知らないわよ」


「このやろう」


激昂したキジマは千秋に殴りかかった。


それをかわすと、千秋はキジマにデコピンをする。その挑発的な行為に、キジマはさらに激昂し何度も殴りかかる。

 それらの攻撃をかわしながら隙あらばデコピンを繰り返す、キジマの怒りは頂点に達し、隠し持っていた特殊警棒を取り出し、ひと振りして伸ばす。


「なにもかも、てめえのせいだ」


「自業自得でしょ」


「うるせえ、てめえがいなきゃ名古屋でほとぼりが冷めてから東京本社に戻れたんだ、コンペだって出来レースだったんだから何もしなくても勝てたのに、てめえがしゃしゃり出てくるから……」


「出来レース? どういう事なの」


あっという顔をしたが、すぐに口を押さえる。


「ふうん、どうやらまだ何かにありそうね」


「うるせえ」


特殊警棒を振り下ろす、狙いは千秋の頭だったが、なんなくかわす。


「くっそぉ、ちょこまかしやがって。女のくせに女のくせによぉ」


「男の風上どころか、男の枠におけないあんたが何いってんのよ」


「うるせえ、うるせえ、うるせえぇぇぇ」


コイツさっきから、うるせえしか言ってないな。千秋はため息をつくとキジマを睨みつける。


「キジマ、私の中の卑怯な行為というのを教えてやる。大勢で襲う、後ろから襲う、武器を使うの3つだ。

あんたは、女を、4人がかりで、後ろから、道具を使って襲ったんだ、そんな卑怯者が男を名乗るな!!」


「うるせえぇ、女ごときが上からセッキョーするんじゃねぇ、いい気になるなぁぁぁ」


叫びながらキジマが千秋に襲いかかる、千秋は今度は避けない、ヒールを脱ぎ構える。大きく入ったスリットから白い肌の綺麗な脚があらわになる。


上から振り下ろされる特殊警棒をかわすと、カウンター気味にハイキックをキジマの顎にヒットさせた。


脳を揺らされたキジマは、がくがくと震えるとだらしなくその場に倒れこんだ。


キジマを見下ろしながら千秋は言う。


「お前こそ、いい気になるな」




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