表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/196

オニさんこちら

 会場に戻ると、なにやらもめている一角がある。なんだろうと覗いてみると、課長がスタッフに問い詰められていた。

 今度は何やらかしたんだと思いながら近づき、スタッフに尋ねると、ずっと女性用の控室を見続けていたので、他の女性客から指摘があり理由を訊いていたところだと言う。


千秋は課長に話を訊く。


「いやそのどうにも居心地が悪くて、はやく君が出てこないかなと見ていたんだ」


そう、ばつ悪げに話した。


 千秋は、用がすんだのでもう帰る事にしたと課長とスタッフに言うと、主催者に挨拶してから帰るので、出入口で待っているように伝えた。


スタッフに連れられて出入口に向かう課長を見送ると、千秋は七事院長のもとに向かい今日の失礼を詫びる。


「一昨日話してた上司が彼のようだね」


七事が笑いながらこたえると、さっさと昇進してしまいなさい、と言ってくれた。


 挨拶をすまし、クロークに向かい今日のドレスの上に羽織ってきた春コートを受け取り、袖をとおす。

ロビーを見渡すと、課長がソファに座っているのが目に入った。


背中合わせにあるソファの方には2人座っており、背中越しに何やらか話している。おそらくキジマの仲間達だろう。千秋は課長のところに近寄る。


「課長、本日はお疲れ様でした。私はこれで失礼をします」


会話に夢中になっていた3人は、ビクッとしてそのまま固まる。課長が慌ててぎこちなく千秋の顔を見る。


「あ、お、え、お、ご、ご苦労さん」


千秋は一礼すると、ホテルの外に向かった。


「待ちたまえ、佐野君」


外に出て、駅に向かいかけたところに課長が追いかけてきた。手には何か入った紙袋をさげている。


「3月の終わりとはいえ、まだまだ寒い。これを使いたまえ」


たしかにまだ寒い。渡された紙袋の中身はマフラーであった。なんでもない時ならば、珍しく気が利くなと好感度アップな出来事なのだが、場合が場合だけに、何かあるかなと勘ぐってしまう。


それよりも何よりも、マフラーのデザインが……。


「あの、課長。マフラーはありがたいのですが、ナゼこのような蛍光色で7色のモノを選んだのでしょうか」


「え、なにかおかしいかね」


「……」


やめよう、これ以上メンタルを削りたくない。黙って袋にしまい、お礼を言うことにした。


「帰りに巻いていくといい、特に寂しいところに行ったときは防犯になるから」


「……ありがとうございます」


はやくこの場を離れよう、でなければ、突っ込みを通り越してダメ出しを2時間、説教を3時間くらいしたくなる。


千秋は足早にその場を去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ