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その2

 課長の後ろをみると、パーティーのスタッフが立っている。おそらく無理矢理入ってきたのだろう。

 千秋はため息をついた後、スタッフに知り合いだと説明した。納得してもらい、平身低頭で失礼を詫びた。当人の課長はきょとんとしている。


 こういうところでは雑多な人が集まるから身元を保証する紹介者を通して先に主催者に伝えないと防犯の意味でも怪しまれるんですっ、と怒鳴りつけたい衝動にかられたが、これ以上目立ちたくないので、グッとこらえた。


深呼吸をする。


「課長、御心遣いはありがたいのですが、私ひとりで大丈夫ですので、任せてください」


「何を言う、負けられないコンペなんだろうが、相手だって、上司と一緒の方がより信頼が増すだろう。さ、紹介したまえ」


周りをはばからず、大きな声で仕事の話をするので周囲の者が顔をしかめる。それが気になる千秋は冷や汗が出はじめる。

 とりあえず会場のひと気の無いところに課長を連れて移動する。


「おおい、佐野君、何処へ行くんだね、例のバイヤーさんは何処だね」


背中から聴こえる課長の大声に、千秋のメンタルはへし折れそうになる。まさか本来の計画の前に、こんな伏兵がいたとは……




 会場のひと気の無いエリアに来ると、まず心を立て直した。それから注目されるのを覚悟すると、課長に向かい千秋は話す。


「課長、昨日もお話ししましたが、こういうところでは、自分が会社代表となるんです。スーツ姿なのはよろしいのですが、それはビジネススーツです、それも普段着用しているのですよね。たとえビジネススーツでも、せめてワンランク上の物を着てくるのがセオリーなんです」


「そ、そうなのかね」


「上司と一緒の方が信頼されると仰いましたが、その上司が普段と同じ格好で来られると、相手には自分は格下に思われていると思って怒らせてしまうんです」


「な、なにを言う。一張羅を着てきたんだぞ、普段はイチキュッパのだが、これはサンキュッパのスーツだぞ」


ならせめてスリーピースを選べっ、と喉元まで出かけた。こういう場に来たこと無い人だから何を言っても噛み合わない。千秋はふたたびメンタルがへし折れそうになった。


 ケイもハジメも、今は大変だろう。ノブはこういう場では助けにならない、むしろマイナスになる。塚本さんは論外、いちばん当てになる一色君もダメだ。何か用があると言ってたし、万一呼んでも部下の方が当てになるのかと、課長が騒ぎだすのが目に見える。


どう切り抜けよう。

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