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2人と2人

 会話が終わったのでアプリも閉じる。同時に笑いを堪えていた一色が大笑いした。


「か、課長、ナイスファインプレー」


正直に千秋達の言ったとおりに話されたら、怪しまれたかもしれない。だが課長が自分の手柄にしてしまったので、その可能性がかなり減った。


「人の話そのままパクっただけだけどね」


千秋も笑っていたが、すぐに真顔になる。


「さぁて、これで御膳立てはできたわ。次の勝負は明日の夜ね」


「その前に僕のプレゼンの打ち合わせ、もう少し付き合って下さいね」


そうね、と言うと2人はあらためてプレゼンの打ち合わせに戻った。




 午後11時にあと少しでなる頃、訪問者が来た。

室内の女は手を止め、玄関に行く。インターフォン越しに見ると、知った男だった。


「どうぞ」


「お疲れ様、はい、差し入れ」


男から差し出されたビニル袋の中は、女の好きなメーカーのカップ春雨スープでいっぱいだった。


「わかってるじゃん」


袋を受け取りながら微笑む女は、男を迎え入れる。


「撮影中だったのかい」


男がいるのも構わずタオル地の、おそらく自作のであろうワンピースを脱ぎ、全裸になりながら袋をテーブルの上に置く。そのまま端末のあるデスクに行き、プリンターに打ち出されたレポート用紙をとり、男に渡す。


「さっき出来たところ。どうかな」


男は受け取ったレポートを読み始める。10枚程のレポートを読み終わると感想を言う。


「いいね、相手が悦ぶツボを抑えているし、僕でもクルものがあるよ」


「よかった、テンマが言うなら大丈夫だわ」


女はホッとした顔になる。そして別のラフ絵を数枚見せて訊ねる。


「どの構図がいいと思う」


テンマはパラパラと見ながら、どれが良いか思案する。


「今回はピンポイントで狙わないといけないから、ターゲットの嗜好を考えないとね」


「……じゃあ、これどうかな」


「ああ、いいね。これにしよう」


よし決定、というとクローゼットに向かい、扉を開ける。そこには数々の衣装が並んでいた。

 いくつかの衣装をピックアップすると、別の部屋に移る。そこは撮影器具以外何もない部屋で、どうやら撮影用の部屋のようだった。


 衣装を着てウィッグをかぶり、メイクをはじめる。どんどんと別人になっていく女を眺めながら、テンマは呟いた。


「お願いしますよ、AA[ダブルエー]先生」

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