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私は幾ら

 まったく、これではどちらがボスだか分からないなと、一色は思った。


「明日も私は万全の態勢でパーティーに出ます。今日は遅くなりますが、昼近くまで寝てじゅうぶん休息をとった後、ジムで身体を目覚めさせてから、ドレスアップして行きます。まずは見た目からですから」


「君はそこまで考えているのか」


「もちろんです、成功させて3課の評価をあげましょう」


課長は黙って返事をしない。やっと口を開くととんでもない事を言い出した。


「……まさか枕営業じゃないだろうね」


それを聞いた途端、千秋、いやそれより先に一色が怒った。


「課長、何てこと言うんです、チーフがどんなに頑張っているか見てて分からないんですか。そんな事するわけ無いじゃないですか」


自分に対していつもへらへらとして口ごたえしたことの無い一色が喰って掛かってきたので、課長は面を食らったが、それゆえナメるなとばかりに言い返す。


「なんだその態度は、いいか常識に考えて仕入れの価格がこの土壇場であんな条件で見つかるわけ無いんだ。それなのに見つかった。裏があると勘ぐって当然だろう。ましてやドレスアップしていくパーティーなら、やましく思えるだろうが」


一色は言い返そうとするが、代わりに千秋が答える。


「課長は、いわゆる風俗には行かれないんですか」


「な、なにを……」


「人から聞いた知識なのでよく知りませんが、ああいうところは何万かするそうですね。ところで今回のコンペで動く金額は億単位です、となると値引きの単位は何千万となるわけですよね」


千秋の言いたいことが分からず、課長は だからなんだという顔をしている。


「課長は私に何千万の価値があると言っているんですね、ああすいません、私の身体にですね。そんなに高く評価していただき、ありがとうございます」


口では感謝の言葉を伝えているが、両腕を組み仁王立ち姿で、上から睨み付ける目つきではあるが微笑んでいる。

そう言われて、ハイともイイエとも言えず言葉を探すが、見つからず、黙るしかない課長だった。


役者がちがうな


一色は素直にそう思った。


しばらく黙って焦らして困らせた後、千秋は口を開く。


「課長には、私の身体に高い評価をいただきましたが、残念ながら相手は私の身体にそれほど価値をもっていただいておりません。身体を磨くのは身だしなみの一環ですよ、おわかりいただけましたか」


「……もういい」


言い負けた課長は、それを言うのが精一杯だった。

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