その2
皆、自分のスマホでめいめいにマップアプリで場所を確認している。
「ああ、たしかにやりやすそうな感じっすね」
「ここから人気の無いところとなると……、ダメだ、これじゃわからねえな」
「会社の端末で」
「バカヤロウ、会社の端末じゃログが残るだろうが」
「現地に行ってみますか」
「……そうだな、明日の動きは分かっているんだ、ヤるのは明日の夜にするか。今夜は明日の為に下調べにするぞ」
「うっす」
「拉致ったら、いつもの順番でヤる。動画と画像を録るの忘れんなよ。それをネタにコンペをやめさせる、その後はいろいろと役に立ってもらうか、いろいろとな」
キジマが下卑た嗤いでニヤつくと、他の者もつられてニヤついた。
「おっとそうだ、あの女をそこまで誘い込まなきゃダメじゃないか」
「リンチョウにやらせたらどうです」
「リンチョウか……、アイツにやれるかぁ?」
「脅しゃ、必死でやりますよ」
「ふん、そうだな。なにがなんでもそこに連れてくるように言っておくか。じゃあお前、壱ノ宮に行って調べてこい。拉致ったあとやりやすい場所を見つけてこいよ」
「はい」
キジマは何人かに命令したあと、考える。
まったく、なんでこんなことになっちまったんだろ。大学のときの事なんて5年も前の事だろうが、それを今さら掘り返しやがって。おかげで5人まとめて名古屋に来るはめになっちまった。親父に戻りたいって泣きついたら、コンペをお膳立てしたから、それで手柄をたててこい。それを理由に戻してやるなんて言いやがる。めんどくせえ。
一緒にとばされた他の4人をキジマは見回す、どいつもこいつもキジマの顔色しか見ていない奴らだった。
オレの言うことをきくコイツらにやらせて、働かないつもりだったのに、どいつもこいつも言われたことしかやれねえ。つかえねえ奴らだ。プレゼンの資料つくりなんてはじめてやったよ、このオレがだぞ。それに向こうの情報が手に入るラッキーまであったんだ、コンペは絶対勝つはずだったんだ、なのにジャマしやがって、あのオンナ!! そうだ、あのオンナが悪いんだ、なにもかもあのオンナが悪いんだ、あのオンナのせいに決まっている、セキニンをとってもらうのはトーゼンだろ。土曜の夜が楽しみだな。コイツらは仕事は何にも役に立たないクズだが、こういう事なら役に立つからな。あのオンナめ、楽しみにしていろよ。
泣き叫ぶオンナを想像して、またニヤつくキジマであった。




