表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/196

その5

「課長、まさか判子を失くしたんですか」


「とぼけるな、私が判子を捺さないと思って盗って勝手に捺すつもりだろう」


「課長は捺さないつもりなんですか、私がなぜ課長が捺さないと思うんです。負けそうなコンペだったのに、起死回生の手段が見つかったんですよ。確実に勝てそうなんです、課長が捺さないなんて思いませんよ」


「しかし現に……」


そう返事しながらジャケットのポケットに手をいれると、触れるものがある。取り出してみると、印鑑ケースに入った判子であった。

 そのまま固まる課長に、千秋ら3人がじっとみる。ばつ悪げに課長は黙って自分の席に戻っていき、今朝と同じように机にうつ伏せになり、両腕で頭をおおった。


 その動きをひととおり見たあと、3人は目を合わせ頷きあう。

 タネを明かせば課長が千秋に集中している間に、後ろから一色がそっと近づきポケットに戻したのだった。


 一色はさっきのお返しとばかりに、千秋にウインクする。それを受けた千秋は小さく投げキッスを返した。




 午後3時の休憩になると、いつものように一色がコーヒーを全員の分を淹れようとするが、課長はそれを断り外出する。


「うまくいきましたね」


「なかなかの手際だったわよ、仕事の方はどう」


休憩時間なのに手が止まらない塚本を見る。定時で帰る塚本のタイムリミットまで、あと2時間をきっていた。


「少し時間が足りなさそうですね」


顔色から察した一色は小声で千秋に耳打ちする。


それが聴こえたのか、塚本のモニターに新しいウインドウが現れ、そこに書かれた文字を2人は読む。


“大丈夫です、少しだけ残業します。それで出来ます”


一色が驚愕する。


「えええ、塚本さんが残業!!」


「塚本さん、無理しなくていいのよ」


“大丈夫です、やりたいんです”


 返答を打ちながらも書類作りの手も止めない。

 鬼気迫るような没頭状態になったので、2人は見守ることにした。


 その時、千秋のスマホが震えた。課長が動いたらしい。2人はまずそちらに集中することにした。


 やはり課長は、千秋の行動予定と安値の理由を、キジマに伝えていた。しばらくの沈黙のあと、キジマはあとで連絡すると言って通話を切った。千秋もアプリをとじる。


「これでこっちの役割は終わりましたね。あとは探偵さんしだいですね」


「頼むわよノブ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ