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その3

「ど、どうしたんです。それ」


「さっき常務室でコンペの話になったとき、課長がジャケットの右ポケットを触ったの。だからもしかしてと思って、帰りの廊下で失敬したの」


「なんでまた」


「だってまた早退けされたり、万が一、逃げられたら困るじゃない。とりあえず判子だけ捺しといて、あとはバレないようにこれを課長のポケットに戻すだけよ」


一色は呆れ顔になる。


「いつもそんな事やっているんですか」


「今回だけよ」


千秋はしれっと答える。一色と塚本はふたたび顔を見合わせる。やっている事はムチャクチャだが、嫌味がない、それはたぶん自らの為だけではなく、一色達の為にもやっているからだろう。この人なら信じてついていってもいいなと2人は思いはじめた。


 書式をプリントアウトして、念のため3枚判子捺したものを用意しておいた。


「さて、あとは戻すだけね」


「それ、僕がやります」


「いいの? 一色君」


「もう一蓮托生というか、毒を食らわば皿までですよ」


3人は爆笑した。




 昼休みが終わって課長が戻ってきた。また背が丸まっていたが、決意というか覚悟らしきものが顔から出ている。

 自席に着き、3人が何事もなく自分の席に座って仕事をしている姿を見た課長は、直ぐに千秋を呼びつける。


「佐野君、先程の話だが、もう一度詳しく教えてくれないか」


「はい、何から話しましょうか」


「最初から全部だ」


「火曜の昼からと水曜丸一日をつかってもう一度心当たりをまわったところ、知り合いの会社から個人のバイヤーを紹介してもらいました」


「個人のバイヤー? 会社ではないのかね」


「はい、どちらも海外に拠点をおいているので、日本ではあまり有名ではありませんが、アメリカ本社と取り引きのある、それなりに大手の会社と腕のいいバイヤーです」


アメリカ本社と聞いて、その手があったかと課長の顔色が渋くなる。


「その個人バイヤーが先を見越して、大量に買い付けたのですが、売り先が方針を変えてしまって、宙に浮いてしまい倉庫に眠っているそうです。倉庫代がバカにならないから、安値で売ってくれる事になりました」


「その会社とバイヤーは信用できるのかね」


「大丈夫です。私というよりエクセリオンとの関係を失くしたくないでしょうから」


「……それで」


「テレビ電話越しに契約したので、まだ会ってないので、直接会う約束をしました」


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