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その3

「いったいどうやって」


「あちこち出かけた甲斐がありました。別のルートを見つけたんです。昨日、課長にそれを報告しようとしたのですが、早退されましたので報告が遅れました」


「そ、そうか、よくやった」


「これでうちの課の評価が上がりますね。さ、課長、そんなに背中を丸めないで、胸を張りましょうよ」


千秋は課長の胸を広げ、背中を押し、腰を叩いて姿勢を正した。課長職らしい姿勢である。顔色は蒼白のままだが。


 少し思案顔した課長が背広の内ポケットから財布を取り出し、紙幣を千秋に渡しながら話しかける。


「佐野君、すまないが1階の自販機で全員分の飲み物を買ってきてくれないか。前祝いだ」


「わかりました、ありがとうございます」


紙幣を受け取り1階に向かおうとするが、ふと足を止め、課長に訊ねる。


「私の飲みたいものはコンビニにしか無いので、コンビニまで行っていいですか」


「ああ、かまわんよ」


千秋はぺこりと頭を下げると、コンビニに向かった。




「ただいま戻りました。みんな、課長からよ」


 コンビニで買った飲み物を一色と塚本に渡したあと、課長にお釣りと飲み物を渡す。


「ご苦労。佐野君、さっきの話だが新しいルートというのは大丈夫なのかね。君の話からすると会ったばかりのようだし、そこは信用出来るところなのかね」


「ええ、たしかにそこと私とは浅いですが、間に入った方が双方に信頼出来る方なので、互いに信用できるんです」


「契約はもうしたのかね」


「まだ口約束です。ですが、土曜の夜に本契約をする約束です。時間ぎりぎりですが、それを元に日曜にプレゼンの資料を作り、月曜の朝に課長から判子をもらい、一色君にコンペに行ってもらいます」


突然自分の名前が出てきたので、驚いた一色が千秋を見る。千秋は後ろ手でオーケーのハンドサインを送った。


「だから課長、月曜は必ず出社してくださいよ。会議にも出ないといけないし」


会議というワードを聞いて、ふたたび顔色が悪くなるが、ああ、と返事をしたあと千秋に仕事に戻るように言った。


 一色達に話しかけることなく自分のデスクに戻り、先程買った、正確には課長のおカネだが、お気に入りのドリンクの蓋を開け、飲み干した。それはひと仕事終えた後の一杯のようだった。




昼休みになると、課長は飛び出すように部屋を後にした。出ていったのを確認したあと、3人は集まり、緊急会議をはじめる。


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