開戦は金曜日
画像からにじみ出る2人の関係は、かなり親密と見てとれる。
「夫婦って事はないよね、となると付き合っている関係」
「ちなみに課長は既婚で、男のお子さんが2人います」
「不倫かぁ」
「キジマ達が、課長の事を[リンチョウ]って呼んでたけど、不倫課長の事だったのね」
「それをネタにゆすられてスパイしてたのかぁ」
「たぶんね」
それでもまだ不明な部分が多いが、今まで入ってきた情報から察するに、何かしらの弱味を握られて言いなりになっているのは間違いないだろうと千秋は思った。
「とりあえず今日はここまでにするわ。これから4日間、正念場ね」
千秋は資料を持ち、帰り支度をはじめる。
蛍はやはり心配なのだろう、クルマで送るとつたえると、千秋は素直に受け入れた。
家に着き、軽くシャワーを浴びてから、ベッドに潜り込んだ。明日は早い。計画の初日なのだから。
金曜日の朝日が、千秋を起こした。
「よし」
千秋はいつもより早く起きて身仕度をした。
熱いシャワーを浴びて身体を起こし、3代目勝負下着を身に付け、気合いの入ったメイクをし、パンツスタイルのスーツをピシッと着こなす。
「おやまあ、遅く帰ってきたと思えば、今日は早く出るのね」
「おはよう、お祖母ちゃん。ごめん、今日は朝食いらないわ」
「あらそう、わかったよ」
「いってきます」
「ちょいとまちなさい」
祖母の声に、玄関で立ち止まり振り向くと、寝間着姿のまま祖母は千秋に近寄る。
「なに? お祖母ちゃん」
「あんたのひいひいばあちゃんの話、覚えている?」
「お祖母ちゃんが酔うとがよく話しているからね。それがなに?」
「あんたには、その血が流れているからね。それだけ。行ってらっしゃい」
そういうと祖母はまた寝床に戻っていった。
別に今日何をやるかは話していないが、何か勝負に出ると感じたのだろう。祖母なりの激励をしてくれたらしい。おかげで千秋は更に気合いが入った。
「よし!」
今日2度目の気合いを入れると、千秋は勢いよく玄関のドアを開ける。駅まで歩くその足は、勇ましさにあふれていた。




