その4
「あんたが立てた計画や作戦が、今まで失敗したことある? 無いでしょ。何故だと思う? あんたが立てたモノは完璧だからよ。それにくわえて、それを実行するのが、私とハジメよ。失敗する訳ないじゃないの」
千秋は蛍に、まるで駄々っ子に言い聞かせるように、説いて話す。蛍はうんうんと頷きながら、だんだん泣き止む。鼻をかんで涙をふき、顔を拭いた。
「ごめん、ちょっと動揺しちゃった。そうよね、あたしがしっかりしないと、千秋が困るもんね」
「そうよ、あんたが頼りなんだから」
「任せなさい、必ず計画を成功させて、あたしに感謝するようにしてみせるから」
いつもの口調に戻った蛍にホッとする千秋であった。蛍は立ち上がると、計画のチャートを事務机から持ってきて、千秋に見せた。それに目を通す。
「ふうん、なるほどね。ハジメとハジメの会社の人にも手伝ってもらうのか」
「そ、誰ひとりとして損な役割りはさせないわ」
「襲撃の時間と場所を調整しないとね。最新の情報だと、明日襲う気らしいから」
「え、明日!? なんで明日なのよ」
「週末だからじゃない」
「あ、そうか。年中無休の生活だと、その辺疎いわ」
「それは私がやらないとね」
「手はあるの」
「こういうのはどう」
千秋は考えを蛍に話した。蛍はそれに合わせて計画チャートを作りプリントする。その間に千秋はノブと一色に連絡を入れた。
「はい、これ。ハジメには迷惑かけない程度に事情を話してあるわ」
「会社の人は動いてくれるかな」
「それはあたしからもフォローを入れておくわ」
2人はあらためて計画を見つめ直した。都合のいい解釈をしないように、互いに容赦なくつめる。
小1時間ほど経つと互いに納得できる計画が仕上がった。
「こういうのは久しぶりね、学生時代以来かな」
「研究室ではよくやったわよねぇ」
蛍が入れたお茶を飲みながら四方山話になる。
「もう遅いけど、今日、泊まっていく?」
「ううん、帰るわ。明日の準備があるから。あ、そうださっき話した最新情報」
千秋はスマホを取り出すと、先ほど見つけたツーショット画像を見せる。
「誰? この2人は?」
「男の方が、うちの課長。女の方は見覚えない?」
「う~ん……、あ、ひょっとしてあのコ? あんたのストーカー」
「そ、で、たぶん、経理課のコ」




