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その2

 フロアにクスクスとした笑いがこぼれた。


「テンマ、今のは私がフラれた事になるのかな」


「お互いにフラれた感じですね」


 今度は、どっと笑いがおきた。


「君のLGBT感は理解した。会の長としては、この場にいる事を許可したい。皆はどうかね」


 フロアから拍手がおきた、どうやら承認されたらしい。


「では、あらためて会の主旨を話させてもらおう。まず、会の名前[ロバの耳]だが、ここで見聞きしたことは口外してはいけないという意味だ。分かるね」


「はい」


「この会は元々、私ともう一人が始めたものなんだ。これでもそれなりの社会的地位のある立場でね、カミングアウトすると少し社会を混乱させてしまうんだ」


「わかります」


「言えない秘密を抱え込むと、ストレスが溜まり色々と不調をきたすのでね。だから気兼ねなく言える空間をつくった。それがこの店なんだ」


 入るとき特殊な造りだなと感じたが、そういう理由だったのかと理解した。


「最初は、私ともう一人、そしてここのオーナー兼マスターの3人だけだったが、他にも同じ悩みを持つ同好の士がいてね、少しづつ増えて今にいたっている」


 フロアにいる人々はめいめいに頷いた。


「皆さんの憩いの場なんですね、あらためて騒がしてしまい申し訳ありません」


 千秋は再度、会長に頭を下げた。


「さて、会員が16人ほどになったところで、1人の青年が現れた。彼は我々と違い、自分がゲイなのを隠さずに社会に参加しようとしていた」


 千秋は一色を見る、少し照れた顔をしていた。


「我々が出来なかった事をする彼を、私達はファンになった。テンマはこの会のアイドル的な存在なのだよ。それだけじゃない、彼の人柄と資質にも好感を持っている、それは君も分かるだろう」


 千秋は頷く。


「我々は彼に期待している、性差別そしてジェンダー差別の無い社会へ向かうために」


 会長は千秋に向き直り、心を込めて言う。


「テンマをよろしく頼みます」


深々と頭を下げる会長に千秋は力を込めて応える。


「任せてください」


フロアから大きな拍手が響いた。

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