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その3

 中は通路になっていて、足元だけが薄暗く照らされている。一色は先に進み、千秋はあとについていく。

 2メートルほど進むと右に折れ、それからすぐにまた右に折れた。そしてふたたび2メートル進むと、扉があり、一色はそれを開けて中に入る。


「いらっしゃい、テンマ」


「よう、テンマ」


「こんばんは、テンマ」


 すでに居るらしい人々が、口々に一色に声をかける。続けて千秋が入ると、それらの人々がピタッと黙った。


「……テンマ、こちらは?」


「僕の知り合いです、身元は保証しますよ」


「しかし……」


「大丈夫ですよ」


 妙なやり取りと、店の造りと、まわりの人々の反応。千秋にはまだ受け止めきれなかった。

 とりあえず、かなりシークレットなところなのは確信した。


 店内の作りは、先程の通りすぎたショットバーとほぼ同じで、カウンター席とボックス席がある。大きく違うのは、かなり薄暗くて顔は見えないがこちらの客層はわりと年配の男性ばかりということか。

 しかも皆かなり身なりがいい、どう見ても人生の成功者組のようだ。


 一色はカウンター席のほぼ中央の席に、千秋を招いた。促されて座ると、その隣の席に一色も座る。


「さ、ここなら大丈夫です。秘密は漏れませんよ」


 お店のど真ん中で、他の客がこちらをチラチラ見ている(原因は千秋のようだが)この状況で、秘密が漏れないと言われても、さすがに納得出来ない千秋は、一色に訊ねる。


「ごめん、一色くん。これだけの人が居て、注目されていては、そうとは思えないわ」


「誰も僕ら事を見てませんよ、ほら」


 そう言われてあらためて見回すと、不自然な程に他の客はこちらに背を向けて雑談をかわしていた。

 千秋にはまだ納得いかなかったが、時間が無い。ここは一色を信用することにした。


 とりあえず用心の為、言葉を選んで話すと決めて、一色に話しかける。


「まずは話を聞いてくれてありがとう、一色くん」


「そりゃ話しくらい聞きますよ」


「単刀直入に言うわ、私の味方になってほしいの」


 千秋の言葉に怪訝な顔をする一色であった。

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