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その2

 ふたりは会社を出ると、最寄りの駅から地下鉄に乗り、名古屋の繁華街である栄に着いた。


 さすが名古屋一の繁華街だけあって賑やかだ。平日の夜でこれなら、週末の明日の夜はもっと賑やかなのだろうなと千秋は思う。


「少し歩きますよ」


 一色は慣れた足どりで歩き始める。千秋は少し遅れるかたちになる。ほぼ横並びになるがさりげなく一色は歩幅を小さくして車道側に移動していた。


「今日はどういう1日だったの」


「チーフが課長を追いかけて行く前と同じ、他の課のデータ入力する1日でした。お昼に食事に出掛けて、帰ってきたら塚本さんがにやにやしながらメモを渡してくれて、なんだろうねって言って、また入力作業、退社時間になって作業をやめ、塚本さんが帰り、チーフが戻るまで待つという1日でした」


 千秋が過ごした1日とは大きく違い、平々凡々だったようだ。


 話しているうちに、栄の中心からかなり離れたところに来た。中心地のイルミネーションが100としたら、この辺りは10くらいか、その一角のビルに着いた。


「ここの地下階です」


 千秋はビルを見ると、スナックやラウンジの看板が目立つ。飲食店用の商業ビルらしい、一色は地下に降りる階段を先に進み、千秋はその後に続いた。


 地下一階に着くと通路があり、向かって右側は壁で、左側に扉が3つ並んでいる。

 等間隔に並んでいるのだが、この間隔なら4つ並んでいる筈なのに、一番奥だけはなく、のっぺりとした壁になっていた。


「ここです、どうぞ」


 一色は手前から3つ目の扉に立つと扉を開けて、入るように促した。

 千秋が入口にある看板を見ると、


[ショットバー ロバの耳]


と書いてあった。


 中に入ると、カウンターとボックス席のある普通のお店だった。

 しかしよく見ると、カウンター席には誰も座ってなく、ボックス席は満席なのだが、それぞれの客は皆スーツ姿でソフトドリンクを飲みながら、スマホやタブレットに夢中になっていた。なかには眠っているのもいる。


 千秋が戸惑っていると、一色はすたすたと進み、カウンター内のバーテンダーらしい男に何かを見せている、ピアスのようだ。

 それを見たバーテンダーはカードキーを渡す。


「さ、行きますよ」


 一色は千秋を手招きすると、客もバーテンダーも、ぎょっとした顔で千秋を見る。

 千秋は何事かと身構えるが、一色は涼しい顔でカードキーを使い、店内奥のドアを開けて、先に進む。あわてて千秋もあとに続いた。

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