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その5

 千秋は立ちくらみした。倒れかけたが、気を確かに持ってノブに話しかける。


「今は大丈夫なの? キジマ達はいつ頃会ってたの?」


「今はもう離れてるっす、キジマ達を張っていたら、会社出て、地下鉄一駅離れたところの喫茶店に入って、そしたらリンチョウがやって来て、キジマ達にペコペコしながらなんか話してたっす」


「内容はわかる」


「すんません、満席だったんで外から見てたんで内容まではわからないっす。あ、時間ですが今さっきっす」


 千秋は時間を確認する。時間的に課長の動きは、会社を出てから空白の時間はあるが、仕入先に寄った後、キジマ達に会ったらしい。


「ノブ、今はどうしているの?」


「連中がまだ居てそうなので、離れたところで電話しているっす。証拠写真は撮ってあるっす」


「よくやったわ、連中の話が聴けないのなら……」


 千秋は少し考えるが、意を決してノブに伝える。


「ノブ、課長のスマホのデータ盗れる?」


「カンタンカンタン、オチャノコサイサイっすよ」


「じゃ、お願い。無理だと思ったら中止してよ。それと、ああいう悪戯はもうダメだからね」


 あはは、すんませーんと、全然悪びれない謝りを言ってノブは電話を切った。

 傍らから話を聞いていた蛍がにやにやしながら、ほほうと言う。


「千秋さんもすれてきましたな」


「今回だけよ」


 時間は午後4時をまわっていた。


「ケイ、人に会う約束あるからもう行くわね」


「夜また来るんでしょ、それまでにやっておくわ。駅まで送らなくていい?」


「データに引っ付いていて。時間が惜しいわ。じゃあね」


 千秋を見送った蛍は、PCの前に座り、データが整理されるのを待ちながら、モニターに映った自分に話しかける。


「わかっているわよ、気に入らないんでしょ、何もかも」


 千秋は私にとって、王子様でありお姫様なの。その千秋を乱暴する? 濡れ衣を着せる? ふざけるんじゃないわよ。あのコを守りたい、いや、護りたいの。だけどね、私ではお姫様を護る騎士ナイトにはなれないの。その役はアイツに譲るわ。私は私でしか出来ない事をする。お姫様を影から護る、魔法使いの役をね。


「キジマとかいう奴等も、濡れ衣を着せた課長も、千秋に手を出したこと、いや、生きていることを後悔させてやるわ」


 モニターに映った蛍の顔は、魔法使いというよりは、魔女といった方がいいほど邪悪に満ちていた。




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