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その4

 一色の突然の告白に、会員達がどよめいた。


「チーフに対して僕は[好き]という感情を持ちました、だけどそんな筈はない、僕はゲイで恋愛対象は同性であるはずなんです。だから悩みました、僕の心から萌え出たこの気持ちは何なのかを」


 一色の告白(?)に千秋は目を白黒させて立ち尽くす。周りの会員も会長も興味津々として黙って聞いている。


「[好き]、というから恋愛感情だと思い込んでいました。僕はチーフに対しての気持ちを[好き]でなく[好意]という言葉に変えてあらためてこの気持ちと向き合いました。そして解ったんです、この気持ちは、僕は生まれて初めて持った感情ですが、古来よりある感情であることを」


 一色は片膝をつき、右手を左胸にあて、頭をたれる格好をして言葉を続けた。


「コンペでのまるでジャンヌダルクのような振る舞い、横領の濡れ衣を晴らした逆境に立ち向かいはねのける行動力精神力、すべてに感服しました。この一色テンマ、佐野千秋に忠誠を誓います」


(ちゅ、ちゅ、ちゅーせー、って、なに言い出したのよ一色くん)


 千秋は身体は立ったままの姿勢で心の中で仰け反った。しかし一色は本気らしい。

 助けを求めようと周りを見るが、会員はどうなるかと固唾をのんで待っている。そんな最中、会長が立ち上がった。


(助かる)


と思ったが、一瞬で嫌な予感に変わった。会長の目が喜んでいる、この即興劇に参加する気満々の顔だ。


「では、この忠誠の儀式、この私が立会人となろう。汝一色テンマ、そなたはここにいる佐野千秋に忠誠することを誓うか」


「誓います」


会長は満足そうに頷くと千秋を見る。目が わかっているよね と言っていた。


「汝佐野千秋、そなたはここにいる一色テンマの忠誠の心を受けるや否や」


この場所、このメンバー、この雰囲気、とても断れる空気ではない。

あーもう、と思いながら開き直り一色に話しかける。


「一色テンマよ、そなたに尋ねる。私はこれより険しく困難な道を進むが、それでもついてくるか」


「はい」


「その道は遥かな頂を目指す道であるぞ」


「ついていきます」


「頂とはエクセリオン本社の社長トップである、それでもか」


会長は目を丸くし、会員達はどよめいた。しかし一色の態度は変わらず、当たり前のように答える。


「もちろんです」


「……私、佐野千秋は一色テンマの忠誠を受けよう」


おおぅ、という歓声とともに会員全員の拍手が店内に鳴り響いた。

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