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その3


 [ロバの耳]は開いてはいたが、人気ひとけは無かった。一度しか来たこと無いが食事の後の会話するための、いわゆる2件目か3件目の性格のお店だろうから、この時間はこんなものなんだろう。


「みえてますか」


 一色がバーテンダーに問いかけると、黙って頷いたので片方ピアスを見せてカードキーを受けとり、奥へと入る。

 奥の店内は相変わらず暗かったが、一色に続いて入った時、突然拍手で店内が沸いた。千秋はビクッとして身体が固まるが、一色に誘われて身構えながら入っていくと会長が笑顔で出迎えてくれた。


「ようこそ佐野さん、歓迎しますよ」


「会長、この間はありがとうございました。歓迎ってどういうことです」


「例の作戦ですよ。悪者集団に鉄鎚を喰らわせた事を皆が快哉しているんです。リーダー格にキックを決めたらしいですね」


千秋は思わず一色を見る。


「ああテンマは何も言ってないよ。ここで君が話した計画を個人的に興味を持った会員が集めた情報だ。警察に友人がいる者もいるんでね」


 会長に案内されテーブルに着くと、ワインと料理が運ばれてきた。


「我々は同性愛者だが、だからといって女性を敵視している訳ではない。嗜好とは関係無く暴力で無理強いするのは赦せないからね、よくぞ正義の鉄鎚をくだしてくれた。今日は私の気持ちだ、サケと食事を楽しんでくれたまえ」


 ショットバーらしく軽食な感じだったが、それでもじゅうぶん豪勢と感じる料理だった。千秋はまだ戸惑っていたが、一色に促されてありがたく頂くことにした。


「美味しい」


 白ワインを呑んだ時も、料理を食べた時も千秋はシンプルかつ最大級の賛辞を口にした。

 食事中に、会長からキジマ達をどうやって罠にかけたのか訊かれ、千秋は言葉を選びながら差し支えない程度に答える。しかしそんな気遣いは無用だった。

 というのも、どの程度の地位の友人か知らないがほとんど全部の内容を知っていたからだ。ここの人脈はすごいなと千秋は舌を巻く。


 食事が終わり、談笑時間になると千秋は周りを見る余裕ができた。今日は7人来ているようだ、相変わらず顔は確認できないが。


「さて、テンマ。今日は君に呼ばれて来たんだが、なにかあるのかい」


 会長に水を向けられ、一色は少し緊張した面持ちで千秋に向き、立ち上がるようにお願いした。千秋と一色は立ち上がり、互いに向かい合う。


「チーフ……僕は貴女が好きです」


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