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その2

 とりあえず千秋は閉会式まで観る。滞りなく式は進み時間どおり御昼に終了した。


「今年も問題なく」


「総務部長《加茂くん》と課長《勝栗くん》お見事でした」


 町屋塩尻の独り言ともとれる誉め言葉を言いながら、今日も持参自前のお弁当を食べる用意をしはじめる。

 千秋は塚本を見ると、なにやらごそごそと取り出す。


「塚本さん、お昼それだけでいいの」


こくんと頷くと、席を離れてお湯を用意しに行く。


「これなんです、カップラーメンにしては小さいですね」


町屋塩尻は、春雨スープをはじめて見たらしい。




 駅前の百貨店にあるレストラン街で、オムライスを食べて戻ると、午前中と変わらぬ景色が待っていた。

 居ても居なくてもこの光景は変わらないだろうなと千秋は思い、それならばと町屋に行き先を伝えて護邸のところに向かった。


 少し眠そうな護邸に、一色が研修を断りに来たかを訊ねると、そうだと返事された。


「昨日の御昼だったかな。日本こっちでやりたい事ができたので断らせてほしいと来たな。まあ無理を通す必要が無くなったので受け入れたんだが、正直君に言えばいいじゃないかと思ったな。うまくいってないのかい」


「あ、いえ、経理に手伝いに行ってたので、ここのところすれ違っていまして、昨日はじめて聞いたので確認しに来ただけですから。失礼します」


(本当に断ったんだな、となると一色くんの仕事をどうしよう。他の3人はそうそうにやること(主に暇潰し)を見つけたけど、彼をくすぶらせる訳にはいかないしなぁ)


 馬場の顔がちらりと浮かんだ。しかしそうなると塚本とワンセットになるから、彼女の事を考えればそれは避けたい。なにかいい手がないかと千秋は悩んだ。


 予想どおり一色が戻ってきたのは15時を過ぎる頃だった。設営と片付けの手伝いをしたのと、加納からの伝言で護邸のところに戻り秘書業務をするから、今日はもう来ないという報告を受け、千秋は了解した。


「さて、一色くんも来たことだし私は失礼しますね」


「私も。それと歓迎会の件ですが、申し訳ないけど我々は遠慮します」


家庭の事情を考えると無理強いはできないので、千秋はその返事を了承すると、お先にと言って2人は帰っていく。


「僕らも帰りますか」


「定時まではダメよ」


 初日でこれである、本当にやることを探さないと飼い殺し的な感じで精神がまいってしまうな。


 やがて定時になり3人とも退社すると、塚本と別れて一色と千秋は地下鉄に向かう。


「何処へ行くの」


「[ロバの耳]です」


 ということは聞かれたくない話ということだろうか。店に着くまで珍しく2人は無言だった。


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