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その2

「あーはっはっはっ、わはははは、あっはっはっはっ、」


椅子から転げ落ちんばかりに手を叩いて大笑いする。


「なんて女だ、こっちの思惑をすべて飛び越えたぞ、社長になる? それも本社の? 世界に名だたるエクセリオンのだぞ、言ってくれるじゃないか」


笑いをこらえようとするが、止まらない。


「くっくっくっ、そうか、そういうことか。だからミスターは手放さなかったんだ、見抜いてたんだ、あの女の資質を、器を。くっくっくっ、面白い実に面白い、つまり俺は自分を踏み台にしかねん女を護りながら育てながら上を目指すのか、ワハハハハ」


その時、ノックの音がした。護邸は笑いを堪えながらどうぞと言うと、作業着姿で埃まみれの加納が入ってきた。


「失礼します常務。どうかなされたんですか、外まで笑い声が聞こえてましたよ」


「いやなにちょっとな、愉快なことがあったんだよ。君こそどうしたんだい、そんな格好初めて見るよ」


「あ、いえ、調査資料部の引っ越しをしていたので……、すいません着替えてきます」


「待ちたまえ」


護邸は立ち上がると、加納に近寄り腕ごとがっちりと抱き締める。


「ち、ちょっと、ダメです、こんなところで。それに服が汚れます」


「かまわないよ、カンラのそんな姿をみたら抱きしめたくなったんだよ」


「え、今なんて……、うっ」


情熱的なキスをされて、加納は夢見心地になりかけたが、すぐに我にかえり護邸を押し退けた。


「どうしたんです常務、いつもと違いますよ」


「なんでも無いよ、ただ俺のこれからの人生がたまらなく楽しみになったんだよ。カンラ、人生ってのは本当に面白いな」


 加納は混乱した。慎重な護邸はプライベートでも加納くんとしか呼ばないのに、下の名前で呼ばれるなんてありえない。ましてや会社で抱き締めてキスするなんて。

 それに普段の一人称は私なのに、俺なんて言ってる、おかしい。

 護邸は今にも鼻歌を歌いそうな上機嫌な顔で加納をにやにやと見ている。


「あの女となにかあったんですか」


加納の目がつり上がりはじめる。それしか考えられないと直感した。


「何もないさ、俺がカンラ以外の女に心を奪われるものか。それより聞いてくれ、目標を変えるぞ日本支社の社長なんてやめだ」


「ええ、諦めるの」


「ちまちまと崩壊するのを待つなんてやめだやめだ、本社のトップを目指すぞ。カンラ、ついてくるか」


 驚く加納だったが、護邸は戯言でもなく勢いで話しているのでも無いのは判った。エネルギッシュに覇気に満ちた護邸を見て、ああだから私はこの人を好きになったんだなと思った。


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