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さよなら企画部

 木曜日の朝がきた、今日で本年度が終わる。


 昨日は散々だったので、切り替えが大事とばかりに朝から熱いシャワーを浴びて、千秋は気分転換をはかっていた。


 昨夜は半狂乱で問い詰める蛍をなだめ、大金持ちの話を持ち出して下手に詮索しない方がよいと納得させた。

 それでもまだふてくされている蛍に、今回の報酬とは別で、何でもいうこときくからと約束して、ようやく機嫌を直してくれたのだった。


 はてさて何を言ってくるやら、と思いながら出勤して企画部に行くと、そこには3課のシマが無くなっていた。


 えっ、と千秋は思ったが、総務かビル管理かが、そうそうに片付けたのだと理解する。

 ちらりと1課長を見るが、首を振るだけだった。

 ペコリと頭を下げると、新しい職場である資料課に向かう。


 資料課の近くに来ると目に飛び込んできたのは、廊下に置かれたデスクの山だった。3課のデスク5つ分が置かれている、どうやらこれの置場所を決めるのが最初の仕事らしい。

 やれやれと思いながら室内に入ると、初老くらいの男性が2人すでに居た。


「おはようございます」


「おはようございます、失礼ですがどちら様で」


「今度こちらに来ることになりました佐野です。町屋さんと塩尻さんでしょうか」


「はい、よろしくお願いします。それとありがとう、感謝しています」


「いえ、私は何もしてませんから」


「まあそうなんだけど、正直助かったからね。私も塩尻くんも」


ああこの人が町屋さんで、昨日の人が塩尻さんなのか。


「塩尻くんは奥さんが病弱でね、毎日のように通院している。ここ数年はさらに弱くなったので彼が送り迎えしているんだ」


塩尻は、昨日は失礼して悪かったと謝った。


(なるほど、奥さんのところに早く行きたかったから、つっけんどんな感じだったのか)


「私は、母親が介護が必要になってきてね、諸々の事情で私がやるしかなくて、早期退職するつもりだったんだよ。しかし君が上司として来てくれたから、出勤日数を減らして定年まで在籍することができる。おかげで退職金はほぼ満額もらえる事になったし、何よりも長年勤めた会社だからね、最後まで勤めたかったから本当に感謝している」


 全部郷常務の仕業というか手柄なのに、自分に感謝されて千秋はむず痒くあった。


 とりあえず、室内にデスクを入れなければならないのだが、3人ともそれほど力がある方ではないので、まずはお茶でも飲もうという運びになる。

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