その3
蛍が自分で組んだPCでメモリーカードをチェックしていると、やっぱりねという感じで千秋に言う。
「ビンゴ、入ってたわよ」
「やっぱりね、盗撮とか盗聴系でしょ」
「あたり、なんで分かったの」
「なんとなくね、あのコたぶん自分のチカラもて余してんのよ。だからこれはただの悪戯よ、子供が親にするようなね」
「みたいねぇ、メッセージが入ってたわよ[バレました~ m(_ _)mテヘペロ]だって、全然悪気無いのね。こりゃ確かに誰かが側にいないとダメなコね」
蛍は、データをチェックしながら分析を始める。
「あ、ケイ、そっちもややこしくなっているって言ってたけど、何かの分かったの」
「頼まれた取引先とライバル社の担当者の経歴は、もうわかっているわよ。それでSNS等をチェックして、趣味嗜好もあたりはつけてある」
「すごい、昨日の今日よ。よくできたわね」
「言ったでしょ、見くびってもらっちゃあ困るって」
PCの前に座っている蛍は、後ろに立っている千秋に振り向きながら、どや顔をする。
「ややこしいのはそっちじゃないのよ。あんた、ストーキングされてない? それもオンナに」
ストーキング?! 千秋は、ここしばらくの生活を振り返るが、心当たりはなかった。
「心当たり無いけど、どういうことなの」
分析作業に集中し、モニターが切り替わり別の作業が始まると蛍は席から離れた。
「よし、もうウイルスは無いわ。あとは必要なデータを取り出して整理してくれるのを待つだけよ」
蛍は、一旦部屋を出ると、何かしらのファイルを持って戻ってきた。それはジムの会員のプロフィールであった。
「このコ知ってる?」
千秋は蛍からファイルを受けとると、顔写真と名前をみる。名前は知らない、顔はどこかで見たような気がするが、たぶんジムでだろうと伝えた。
「ふむ、となると部署が違うのかな」
「このコがどうしたの」
「ウチのジムに入会するときに、身分証明書を見せてもらうのは知っているでしょ、基本的に名前と現住所だけなんだけど、私は念のために、職場と職業も訊いているの。経営者として入金が滞らない為と、トレーナーとして運動メニューを組む為にね」
千秋は頷く。
「で、このコの身分証明書は運転免許証だから、名前と現住所は間違いんだけど、職場というか勤め先がね、ハイネサ商事と言うんだけど、確認したら違ってて、別の会社だったのよ」
「ちょっと待って、さっき部署が違うのかなって言ったわよね、まさか」
「そ、エクセリオン日本名古屋本社」




