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その2

 時は深夜、明日が今日になるころで、名古屋のとある場所にある高級マンション。

 そこの一角にあるAAの住み処は、壁をぶち抜いて3部屋分繋げてある。


 高級マンションゆえセキュリティが高い。AAは普段全裸でいたいという理由で、ここに住んでいる。


 その部屋のキッチンスペースにあるダイニングテーブルで、全裸のAAがイケメンだが少し疲れた男と対面している姿は、あまり人に見せられない絵面だろう。


「僕はどうしたらいいんだろう」


「知らないわよ、アメリカに行くんでしょ。そんな気持ちはほっとけばいいじゃない」


「でもこんなモヤモヤしたまんまじゃイヤなんだよ」


 捨てられた仔犬のような目でAAに迫る一色。彼女なら答えを教えてくれるだろうと期待してきたのだ。だがAAは冷たい、自分で考えろと言う。


 いつまでも答えが出ず固まって、このままモニュメントになりそうな一色を見て、ため息をつきながらAAは話し始める。


「テンマは主任が好きなの」


「うん」


「キスしたりセックスしたいの」


「いや……、そんな気はない。僕の恋愛の対象も性的対象も同性だ」


「けど女性の主任が好きなのね」


自分の心と話し合ってから、一色はうんと答える。


「テンマ、[好き]という言葉を[好意]に置き換えてみなさい。もしくは[好感]でもいいわ」


「主任が好き、でなく主任に好意を持ってる」


自分で口にして何度も呟いていると、だんだん一色の目が輝いてきた。そして分かったとばかりにAAを見た。


「答えが出たようね、おめでとう。じゃあ帰って、おやすみ」


AAは席を立つと寝室に向かう。


「いや、それはそれとしてやっぱり泊めてくれよ。今夜だけでいいからさ、独りで居たくないんだよ」


「イヤよ。何度も言ってるでしょ、あたしは独りがいいの」


「別に一緒のベッドに寝るわけじゃないし、僕が先生に手を出すわけないだろ」


「そういう問題じゃないの、ここはあたしの世界なの、あたしだけの世界なの。誰であろうと他の人が泊まるっていうのがイヤなの」


「じゃあ泊まらないから泊めてよ」


「はあ?」


「泊まるってのは、ここで寝るっていう事だろ。だから朝までずっと起きているからさ。そしたら泊まるじゃなくて一晩中居るになるだろ」


「テンマあんたねぇ」


「頼むよ」


勝手にしなさいと言って、AAは寝室のベッドに潜り込んだ。


 午前3時頃、AAはトイレに行くために起きるとダイニングテーブルに突っ伏して寝ている一色が目に入った。


 やれやれと思いながら、一色を背負い引きずりながら、ほとんど使わないソファーに寝かせる。


「こんな夜中に力仕事させないでよね」



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