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その4

 持っていた缶コーヒーを落としかけたが、なんとかホールドした。


「どういうことです」


「言ったとおりよ、2人が欲しいの」


「私が訊いているのは理由です、いきなり言われてもハイなんて言えないでしょ」


「理由を話したらくれるのね」


「そうじゃなくて」


 相手の意見を無視して自分の都合だけを押しつける物言いに、千秋は苛つきはじめる。


「上司とはいえ、主任の私には人事の権限はありません。私に言ってもどうにもなりませんよ」


「あなた今度、部長になるんでしょ。そうなったら出来るじゃない、それからでいいから」


「……彼らは何かやらかしたんですか」


「デメリットがあったら欲しい訳無いでしょ、メリットがあったから欲しいの」


「それは無いわ、塚本さんは自分のペースを崩さない。協調性が無いから周囲と摩擦を起こしている筈よ」


 馬場がピチピチのスカートのポケットからメモ用紙を取り出すと、千秋に見せた。そこには何かの箇条書きが手書きで書かれた。


「塚本の取り扱い説明書よ。今朝、一色から渡されたの」


(ああ、この人が一色くんの言ってた人なのか。ずいぶんと印象が違うな)


経理部うちが今大変なのは知っているわね、年度末の決算期なのと、横領が発覚したのと、課員が辞めたのがあるから」


馬場は千秋をじろりと見る。どうやら事情をしっている様だった。


「あんたのせいなのは知っているわ、だから塚本を穴埋めで寄越すように部長に言ったの。今は課長だけどさ」


(やっぱり経理部には恨まれていたか)


 そんなところに2人は行ったと思うと、千秋はすまないという気持ちでいっぱいになった。


「事情を知らないのが急に来たら、戦力になるどころか足を引っ張られるでしょ。ただでさえ新1課長が足引っ張っているのにさ」


馬場が吐き捨てるように言う。

 経理部はスズキの退社、1課長の異動、部長の降格、新部長の就任と突然の人事で、てんてこ舞いになっている。

 それは、本来ならとりあえず年度終わりまで待って新年度からすればいい人事を、責任者である大鳥常務が強硬人事させたからだ。


「それでも人手が欲しいくらいだから、単純入力だけでもとやらせたのよ。そしたらどう、あっという間に片付けたのよ、塚本ひとりで。たしかに昔居たから多少のノウハウはあるにしても、それなりのブランクもあるのによ。それに一色、あのコも逸材だわ」


馬場の口調が激しくなってきた。

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