表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/196

その2

 シマに着き、課長の机をあらためると、私物が全く無くなっていた。やはり昨夜のうち誰も居ない時を見計らって持ち帰ったのだろう。


「やはり辞められたみたいですね」


一色の言葉に、千秋は無言で頷いた。

 それぞれの席に着くと、いつも通りの入力仕事を始める。塚本は変わらず平常運転で作業を始め、一色と千秋もそれに倣う。一色がぽつりと言う。


「スズキさんも、なんでしょうかねぇ」


たぶんそうだろうと千秋は答えずに思った。それから10時過ぎくらいに1課長と2課長が、護邸常務に喚ばれて席を離れる。1時間くらいして戻って来ると、1課長が千秋のそばに来る。


「話は常務から聞いた。それだけだ。それと君も常務に喚ばれているから行きたまえ」


それだけ言うと業務に戻ったので、千秋は立ち上がり会釈をすると、一色に伝え常務室に向かった。


「失礼します」


 入るように促され入室すると、護邸と加納がいた。

 加納は無表情を装っているが、少々不機嫌なのが見てとれた。


「昨日はご苦労様。とりあえずどうなったかを説明する。かけたまえ」


社長室と同じように応接用のソファセットがあるので、そちらに促される。


「サトウ課長は昨日付けで退職した、スズキさんもだ。君からの提案を伝えたが、返答は保留となっている、以上だ」


それだけ、と千秋は思ったがとりあえず、はいと答える。


「それだけと思ったかもしれないが、昨日の今日だ、まだ調整中の段階だ。3課の今後の予定は?」


「私は昼から仕入先との打ち合わせで、他の者は入力作業です」


「それなら昼からは一色、塚本両名は経理の応援に行ってくれ」


「大丈夫ですか」


塚本はもともと経理にいたのだが、コミュニケーションがとれなかったので人間関係が齟齬したので企画3課に来たという経歴がある。


「経理部からの要請だ。年度末の忙しい時に、横領が発覚して課員が辞めるというダブルパンチだからな。とりあえず人手が欲しいそうだ」


「そうですか。……一色も一緒なら、コミュニケーションはなんとかなるでしょう。あとは塚本のライフスタイルを崩さなければ戦力になると思います」


「経理部にはそう言っておくよ。では昼からはその流れで。それと」


一拍、間をおいて護邸は言葉を続ける。


「今夜の君の予定は何かあるかね」


「いえ、特には」


護邸はメモ用紙を取り出すと、


「それなら結構。この時間この場所へ来てくれ。ドレスコードはそうだな、土曜日、君がパーティーに着ていったドレスで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ