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その2

「何のことだね」


「こちらに向かう最中に、ラジオから速報が流れました。すぐさまうちの一色に連絡したのですが繋がりませんでしたので、急ぎこちらに来た次第です」


「だから何のことだと訊いているんだ」


「森友さん、コンペはうちに決まりですよね。ウチは早々に社に報告したいので、契約をお願いします」


ずっと事の成り行きを伺っていた群春側から催促が出る。


「そうです、どうやらウチとは関係無い事での揉め事の様ですので、先に済ませてもらえませんか」


 先程まで余裕の態度をとっていた群春側がそわそわし始めるのを、一色は妙だなといぶかしんだ。

 騒ぎはじめた群春側の3人を千秋は睨み付ける、その迫力に全員が黙り、そしておもむろに森友側に向くと、


「一色に先ほど訊きましたが、今日はスマホとかケータイの電源を切るように言われたそうですね。何故です」


「もちろんコンペを円滑に進めるためだ」


「つまり皆さんも電源を切っている訳ですね」


「その通りだ。ほれこの通り」


森友の課長が自分のスマホを見せる、確かに電源オフになっていた。


「でしたら今すぐ皆さん、電源を入れて外の様子を確認してください。お願いします」


 ふたたび群春側が口を開こうとしたが、千秋のひと睨みで引っ込める。その間に芝原をはじめ群春以外の全員がそれぞれのスマホとケータイに電源を入れ、ネットニュースを見た。


「えっ」×4


 思わず全員がハモるように驚きの声を出した。


[本日午後、群春物産株式会社名古屋支社に粉飾決算の疑いがありと、警察の捜査が入りました。主な容疑は脱税とみられています……]


 記事を読み終わった全員は一斉に群春の社員達を見る、3人ともうつ向いていた。皆その姿で、知っていて隠していたのを察した。


「やはり群春さんのニュースはご存知無かったんですね」


千秋の言葉に森友の課長は黙ったままであった、代わりに芝原が口を開く。


「今日のコンペにおいて、外部の連絡を取らないと言い出したのは、我々の判断です。そうですよね課長」


「ち、違う、それは群春さんからの申し出で、コンペを円滑に進めたいからと……」


「お尋ねしますが、どうしてそうまで群春さんの意向を受け入れるのです。開始時間を変えるのもそうですよね、それに」


千秋はつかつかと群春側に寄ると、1人の懐からスマホを取り出し皆に見せる。


「このように此方はスマホの電源を入れたままです、これも認めていたのですか」


「か、返せ」


 スマホの電源が入っているのを皆が十分確認した後だったので、千秋はすぐさま返す。



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