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その2

 ひいき目無しで、一色は頑張ったと言えよう。


 しかしながら、初めてのプレゼンであり、1人きりであり、商品は同質でも相手の価格より高く、森友側は聞く耳持たないとあからさまな態度をとる。

 どうみても出来レースであり、勝ち取らなければクビ、しかも自分だけでなく千秋や塚本の運命もかかっているというプレッシャー、マイナス要因が多すぎた。


 切り札とも言えるAA、ダブルエーこと青木川アリスの事を話すタイミングも見つからない。


 本来なら、群春の自滅で不戦勝する予定であった。その後に、この中にいる筈のAAのコアなファンに用意した物を渡して、付加価値の約束も果たす。その予定だった。


 しかし、すべての予定が狂ってしまっている。なんとかしようと、さりげなくコアなファンに通じるサインや言葉を混ぜて話してみたが、森友側の3人は無反応であった。


「……つまりエクセリオンさんは前回と何も変わらないということですな」


「……はい……」


「1週間も延ばしたのに何の変わりもない。あなた方はちゃんと努力しているのですか、こちらとの取り引きの付き合いの長さに、胡座をかいてテキトウになっていませんか」


 森友側の係長は、今が自分の見せ場とばかりに一色を責める。一色はうまく返せずに、ただただ黙っている。


「だいたい1週間延びたのは、そちらの何ていいましたっけ、そうそう佐野さん、その方が付加価値を付けるというからなんですよ。それなのに付加価値どころか出席もしていない。もともと付加価値なんて無かったんでしょう、ただのその場しのぎだったんでしょう、それが主任とは嘆かわしい。エクセリオンさんも堕ちてきましたかねぇ、ねぇどうなんです」


 まるで千秋が敵前逃亡したような物言いに、一色は言い返したかった。しかし余計なことを言えば、そこで終わってしまう雰囲気だけは分かっている。

 何を言えば、この場の空気を変えられるのだろう、一色はそれしか考えられなくなっていた。


 場の空気を壊してでも、切り札であるAAの事を話すか。しかし失敗すればそれまでの博打でもある、それを決断出来るほどの胆力は、一色には残念ながら無かった。




黙りこくった一色に返事を待つので、会議室の中が静まり返っていると、何やら外が騒がしい。


 最初は気にしなかった室内の面々も、その騒ぎが段々近づいてきたのに気がつき、何事かと思っていたら、その騒ぎは会議室前まで来て止まった。


全員が扉に注目していると、1人の女性が、勇ましい声で勢いよく入ってくる。


「失礼します、遅くなりました」


「チーフ!!」


「お待たせ、一色くん」


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