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その9

「会社の連中は何も知らないから、スズキさんが何かしでかしたかと思う、重役は横領の件で来たと思うから穏便にすますか警察沙汰にするかを決断する流れになる。

そして警察沙汰になればニュースになり、スズキさんの存在が世間に知れ渡る、たまたまポイセンがそれを観る、ポイセンがスズキさんにふたたび会いに行き、その結果また酷い目にあってもスズキさんの自業自得じゃないですか」


「うるさい!!」


千秋が一色のネクタイを掴み、そのまま胸を押して壁に一色の身体を叩きつける。


「どうしたの一色君、君らしくない、そんなこと言うキャラじゃないでしょ」


「僕は可能性を言っただけです。チーフの言った通り、スズキさんのことは忘れて気持ちを切り換えました、可能性としてそうなるかも知れませんが、我々には関係ないでしょう」


一色も負けじと言い返す。2人は睨み合う、これからチカラを合わせてコンペに向かわなければならないのに、しかも自分達の進退がかかっているのに……。


「チーフは課長が脅されている事を心配してましたね」


「当たり前でしょ、一色君が言った通りので、押収品からカネの流れを知られるかもしれないわ。そして警察が確認に来たら横領の件がおおやけになるかもしれない、そうなれば会社のイメージダウンは計り知れない、それを理由に企画3課全員クビの可能性もあるのよ」


「対処のしようは無いんでしょ」


「あるわ、事情を知っている私が説明説得をすればいい」


「今から行くコンペに負けても全員クビになるかも知れないんですよ」


「わかっているわよ」


「じゃあ、やることはひとつですね。コンペは僕が行き勝ち取る、チーフは重役を説得する」


「一色君、あなた……」


一色はにっこり微笑みながら、ネクタイを掴んでいた千秋の手を触った。


「説得、お願いします。我々の為に。僕も頑張ります」


一色の真意を悟った千秋は頷くと、お願いねと言いながらエレベーター横の階段を駆け上がっていった。


「まったく素直じゃないというか意地っ張りなんだから。スズキさんの為になんとかしたいのに、仕事と僕らの事ばかり考えて我慢しているの見え見えでしたよ」




「……とか一色君、思っているんだろうなぁ、あのコ察しがいいから。ほんと何やっているんだろ、縁も所縁もない人のためなんて」


廊下を全力疾走していると、護邸常務の部屋が見えてきた。


「あ~ん、私のバカ~、お人好し~」


廊下に千秋の叫びが響いた。


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