西の森(1)
君影草「誤字報告ありがとうございます。明日は予定があり出掛けるので続きが書けないと思います。」
王城での午前中の勉強が終わり、この日は午後から特に決まった予定はない為、何をしようかと考えながら護衛騎士と廊下を歩いていると前からルーファスが早足でこちらに向かってきた。ついでに今日の騎士様はユーリ様である。相変わらず口は悪いが慣れると可愛い騎士様だ。
「なぁなぁ、ティア!これからの予定はあるのか?!」
目をキラキラさせて尻尾がパタパタさせている幻影が見える程嬉しそうな姿に自然と頬が緩む。
すくすく大きく成長してるのにわんちゃんみたいで可愛いのは変わらないな~。
「特に予定はないよ?どうかしたの?」
「よし!じゃぁ森へ行こう!さっき見習い騎士仲間に聞いたんだが西の森の湖に綺麗な花が咲いてるんだって!見たことない花らしいけど凄く綺麗なんだって!見に行こーよ!」
「わぁ♪いいね!見たい♪」
「じゃぁ、いまからすぐ行こうよ!」
「おい。二人で行くのか?」
はしゃぐ二人にため息を吐き睨むユーリは呆れた表情をしている。
「え?…西の森って危険じゃないよね?」
「おう!魔物も少なくて奥まで入らないなら子供達も入るぐらいの森だよな?」
そう。西の森は王都の西門をでてすぐの森で比較的安全な森なのである。近場であればスライムぐらいしかいない。
「はぁ…お前ら一応貴族だろ。あぶねぇから護衛ぐらいはつけろ。」
「えー!ラナンキュラス副隊長俺結構強いですよ?」
ルーファスは見習い騎士の中でもかなりのかなりの実力者らしい。それに私には魔法もあるし西の森なら危険はないよね?
「今年は例年よりも魔物が増えてんだよ。西の森は安全だったが一応念のため護衛はつれていけ。ルーファス、お前が見習い騎士の中では強いのは知ってるが力を過信するな。男だけで動く訳じゃねぇだろ。アリウム嬢を連れていくならしっかり護衛をつれていけ。あと、こっそり連れてくなよ。きちんとアリウム家には連絡しろ。むしろ、そのままアリウム家
にいってアリウム嬢は森に行くように着替えろ。ドレスで行くなよ。あぶねぇからな。」
あ、そうだった。ついはしゃいじゃったけどドレスで森にはいけないよね。何かあっても動きにくいし、汚れちゃうもん。
「そうですね。着替えてから行きましょう。ユーリ様ありがとうございます。」
にっこりと笑えば、ユーリは顔を背ける。
「べつにお前が心配だからじゃねえからな!当たり前なことを行ったまでだ。」
「ふふ。それでもありがとうございます。」
「っ!いくぞ!」
ツンデレか?ユーリはツンデレ属性なのかな?ムスッとして顔を背けたままだけど真っ赤になって可愛い。そのままルーファスにエスコートされならが歩く。
馬車に乗る前にクロードに帰ってから西の森に行く事を伝えれば「私も同行いたします。」と言われ一緒に行くことになった。馬車にはルーファスと私とクロードが乗っている。
今は夏の暑い時期なのでクロードはすぐにアイスティーを出してくれた。馬車にはワイングラスが掛けられるようになっており、室内でもワイングラス使い飲みモノが飲めるようになっている。ついでに馬車にも小型の空調魔道具が取り付けられており涼しい。王城の吹きさらしの廊下を通って来たので暑かったのだ。ゴクゴク。ん~♪レモンティーだ!美味しい♪
「で、急にどうして西の森なのですか?」
あ。説明するのを飛ばしてた。ルーファスをチラリと見れば私にしてくれた話をクロードにもしてくれて、魔物が増えているから気を付けるように言われたことも伝えた。
「なるほど。分かりました。移動はどうされますか?」
「そうだな~…馬で行くか?」
「馬っ♪やった♪私まだ外で乗ったことないっ!」
実は私、馬に乗れるのです♪ただ、アリウム家の敷地内のみでの練習だから外でも練習に乗ってみたい。その事を伝える。
「おぉ、さすがティアだね。じゃぁ森までは2人乗りだな。クロードも馬には乗れるよね?」
「もちろんです。では、私の馬には荷物を乗せますのでお嬢様をお願いします。」
話が纏まると丁度馬車が止まる。クロードが扉を開けて先に降りて、続いてルーファス。ルーファスが手を貸してくれて私が降りる。
「じゃぁ、私着替えてくるね♪クロードはルーファスの案内をお願い。」
早く行きたいティアラローズはそわそわしながら早口で伝えて私室に向かって階段を駆け上がっていった。
「ぷくくくっ。ティアは元気だね。」
「最近は出掛けるのも王城ぐらいでしたし、実は王都を出るのも初めてなのですよ。」
「ん?じゃぁ、領地にも行ったことはないの?」
「ないですね。」
「そうなんだ。…そりゃ喜ぶはずだね。」
「はい。」
嬉しそうに駆けていったティアに笑いが込み上げるルーファスはクロードの案内で応接室に移動する。ルーファスはまさか今まで王都から出たことがないとは思わなかった。女性でも領地と王都をぐらいなら外の世界を知っている。まぁ、馬車の中からだけど。でも、それすらもないということはそれだけティアを狙う者が多く危険だという意味を示す。
「護衛はアリウム家から出させていただきます。…お嬢様が楽しめるよう影を付けましょう。」
「うん、お願い。ごめんね、まさかそこまでだったとは知らなかったんだ。」
「いぇ、以前からご当主様からは機会があればいつでも行けるようにとの指示はありましたのでご心配には及びません。今まで機会がなかったのです。お嬢様は自らのどこかに行きたいとは行ってくださらないので…。」
ティアラローズは自分が動けば護衛が付くことを理解している。もちろん、下町へでも貴族令嬢だし影での護衛はいるだろうと思っているからだ。更には王族の婚約者候補。自分のワガママでどれだけの人が動くのかが何となく予想していた為に下町へ行くのも誰かの誘いがある時やプレゼントを買うなどの理由がなければ王城へ以外では屋敷から出ることすら少ない。
「は~…ティアは優しすぎるよね。頭がいいから昔から気を使いすぎるし。」
「はい。もっとワガママを言っていただきたいですね。」
「だね~。よし、今日は沢山外を見せよっか。」
「ありがとうございます。では、指示を出してきますので失礼します。」
クロードは応接室をでるのと入れ違いにリオンがお茶の準備をはじめる。
「ねぇ?君は確か…リオンだったかな?」
「はい。」
「君もいくの?」
「もちろんです。ですが、距離は離れていますので…お嬢様を宜しくお願いします。」
深々と頭を下げるリオンにルーファスは真剣な顔で「わかった。」と頷く。
「君達の耳にも入れといた方がいいね。いま、魔物が増えてるらしい。騎士団でも討伐しているがまだ多いと思う。普段から安全な西の森で、俺の知り合いが行った時には特に変わりはなかったらしいが念のため気にしておいて。」
「わかりました。」
暫くしてクロードも帰ってきた。紅茶を飲みながら待っていたルーファスの元に思ったよりも早くティアラローズが来た。
「ルー!準備できたよ♪はやくいこっ!」
ニコニコと部屋に入ってきたティアラローズは白いシャツに胸元には大きめなリボン。スボンは体のラインがわかるデザインであるがこの世界ではセーフなのでティアラローズが馬に乗る時にはぴったりとしたズボンを履く。黒のズボンに黒のブーツ。髪はアップにされている。シンプルだが、スタイルがいいティアラローズによく似合っている。
だが、訓練中よりも体のラインが分かる姿にルーファスは顔を赤くする。
「さ、はやくいこ♪」
そんなルーファスに気がつかないティアラローズの思考は完全に王都の外である。ルーファスの手を引っ張りルンルンで廊下を進むティアラローズをチラチラと見ながら「え?俺このティアと2人乗り?まじか?え?まじで?」なんてブツブツと呟いていた声は全く聞こえていなかった。
馬はティアラローズの愛馬にルーファスと2人乗り。もちろん、森に付いたらティアラローズ一人でも乗る気である。ティアラローズの後ろに股がったルーファスの動きが余りにもぎこちなかったこともあり、日差し避けにフード付きのマントをクロードが手渡した。ティアラローズの体が見えなくなったこと事でやっといつものルーファスに戻り、無事出発することが出来た。
冷却効果の付加付きマント最高ーっ!夏にはいつも着ていたいっ!日傘より断然涼しいっ!!!森って涼しいのかな?湖って泳げるのかしら?貴族令嬢が泳ぐのはやっぱダメ?マントを手渡されたティアラローズは呑気にそんなことを考えていた。
もちろんさすがに普通の貴族令嬢は森の湖で泳ぎません。寧ろ、どこでも泳ぎません。貴族で泳ぐ練習をするのは騎士ぐらいである。一応、なにあたった時のためにと騎士は泳ぐ訓練があります。プールは無いために西の森の湖が泳ぐ訓練によく使われており、休みに訓練がてら涼みにいく騎士もいる。見習い騎士達の話しはその訓練にと遊びに行った時に普段みない綺麗な花を見つけたとの話で盛り上がっていました。




