はじめてのクッキー
君影草「クッキー食べたい。」
ってなわけで、今日は調理場に行ってみました。
「なんでぃ?お嬢様なにかあったんか?」
料理長のダニエルがびっくりしてティアラローズの元に急いできた。実は調理場まで来たのは初めてなの。ダニエルは口は悪いけど優しい人で出会う時に包み紙に包まれたクッキーとかお菓子をくれるの♪「お嬢様の好みか味の感想を教えてくれねぇか?」って。でもね。私が好きなクッキーと食べたことがあるのをくれる時は頬を書きながら「勉強がんばってるみてーだからな。特別だ。」ってくれるの。ふふふ。優しいでしょ?
「えっとね…お父様が…ね。」
「ん?リチャード様になにかあったのか?」
「ん。お仕事頑張ってるの。」
「ん?おう?そうだな。」
「それでね。無理しないでね。って伝えたら更に頑張っちゃってね。もっと頑張っちゃってるから疲れてるとおもうの。」
「あぁ~…な。」
ティアラローズが恥ずかしそうに指を合わせてもじもじしながらボソボソ伝えてると苦笑いしたダニエルが頬をかく。リチャードがティアラローズを溺愛してるのはアリウム家の使用人達は皆知っていることなのである。そんなティアラローズがリチャードを心配したなんてのを直接リチャードに伝えれば喜んで張り切るのが目に見える。
「だから…ね。疲れてるときって甘いものだよね?」
「まぁ、一般的にはそーだな。」
「お父様甘いの食べるよね?」
「あぁ。飲まれるものは甘いのは好まないが菓子なんかは食べてくださるな~。」
首を傾げながら聞くティアラローズにダニエルは腕を組んで考えながら頷く。そして、お嬢様がリチャード様に菓子を持っていくつもりなんだと思いお嬢様の頭を撫でながら答える。
「あぁ。わかったよ。ちょっと待ってなすぐ用意してやるからな!」
ダニエルがニヤリと笑い、腕まくりしながら答えるとティアラローズはアタフタしはじめる。
「あ!待って!違うのっ!」
「ん?なんでぃ?甘いもんじゃねぇのか?」
眉間にシワを寄せながら自分の考えがハズレたダニエルは首をかしげる。ティアラローズは頬を少し赤くしながら恥ずかしそうに更に小さな声でボソボソ喋れるが聞こえないダニエルはティアラローズの目線まで屈む。
「…が…ろう…か…って…。」
「ん?」
「だからね…。…が…ろう…かなって。」
「んん??」
それでも聞き取れなくてダニエルは困ったような顔をしながらティアラローズの言葉をまつ。ティアラローズはとうとう顔を真っ赤にして涙目になりスカートを握りながらちょっと頑張って声をだす。
「あぅ~…。だからねっ!私が作ろう…かなって!思ったの!!」
調理場がシーンとなる。まさかお嬢様が作るだと?!っとびっくりしすぎて固まったのだがティアラローズはアタフタしながら早口で話し続ける。
「あのね!私ここで産まれてから作ったことないの!でもね。甘いもの食べたら元気なるよね?!なら、お父様に作りたいな。って。もちろんね。初めてだから上手くできないだろうからダニエルにも助けて貰いたくて…ダニエルのお菓子美味しいから…あぅ…私が作るよりダニエルの美味しいお菓子のがいい…かな。…私が作ると迷惑…だよね…。」
どんどん泣きそうになりながらしょんぼり肩を落とすティアラローズに固まってたダニエルが手を上下させながは慌てだす。いや、慌てたのはダニエルだけでなく、その場にいた使用人全員であった。
「いやいやいや!お嬢様が作る菓子だろ?!迷惑とかねぇよ!確かに俺の菓子はうめぇがお嬢様の菓子とか特別だろ?!」
「そうですよっ!ダニエルさんすぐにお嬢様と作ってください!」
「味云々の問題っすよ!お嬢様の手作りっすよ?!」
「例え不味くても大丈夫です!私たちが食べますのでお嬢様が満足するまで作りましょう!」
「…ほんと?作っていい?迷惑じゃない?」
「「「むしろ最高ですよ!作りましょう!」」」
「ありがとう♪」
涙を貯めたままの瞳のティアラローズが満面の笑みで答えると使用人達はハイスピードで動き出す。フリージアに許可を取りに行く者。ティアラローズのエプロンを用意…は出来なかったため、簡易で布でエプロンの代用をする者。料理台の足場を準備する者。などにわかれ準備はすぐに完成した。ついでにクロードは何やら魔道具を持ってきて設置している。
実は一緒にきたマリー達もティアラローズが作ろうとしていたことを知らなかったのだ。「ちょっとダニエルにお願いがあるんだっ♪」っと言われて調理場に来た感じだったのだ。
「じゃ!作るか!お嬢様でも簡単にできそーなんはクッキーだろーし、それでいいな。」
「はーい♪」
「常温のバターに砂糖を入れて混ぜる。」
「ん。…混ぜ…る…まざ…らない…。」
「あぁぁぁ…ボールは持っててやるから頑張れ。俺がするか?」
「私が…す…るっ!」
ダニエルが持ってくれたボールの中のバターと砂糖を混ぜるが常温でもティアラローズにはなかなかの力仕事である。必死に混ぜるティアラローズを皆固唾の飲んで見守る。
「よしよしっ!白くなってきたな。わかるか?」
「ん!わかる。」
「じゃぁ、これに混ぜた卵を入れて混ぜるが…卵割るか?」
「するっ!!」
びしっ!っと手を上げたティアラローズがダニエルから卵を貰い割る…が、ちょっと殻が入った。
「あ…殻が…。」
「あぁ。これぐれーならとりゃ大丈夫だ。ほらな。」
「ありがとうっ!」
ささっと殻を取り除きボールを渡す。卵を混ぜてバターと砂糖のボールに入れる。
「少しずつ入れっぞ。」
「はいっ!ゆっくり…」
「ほれ混ぜる。」
「混ぜて…。」
「また入れる。」
「…入れて…混ぜて。」
ティアラローズがするために結構時間がかかってるが頑張って混ぜ続けるティアラローズ。額に汗が滲んできたのをマリーがハンカチで拭う。
「小麦粉を全部入れて切るように混ぜる。まだいけるか?」
「いけますっ!」
汗だけでなく息も上がってきてるが頑張ってさっくり混ぜるように頑張るティアラローズ。真剣にずっと頑張っている為に周りは声をかけることさえティアラローズの邪魔になるのでは?っと応援の言葉すら出せずに拳を握っている。
「よしっ!とりあえず一旦生地を冷やしてくっからお嬢様は休んでなっ!」
「ふぇ~…つかれた~…。」
「はははははっ!よーがんばったな!」
ティアラローズは調理場の隅にある椅子に腰かけるとクロードから冷たいレモネードが用意されグビグビと一気に飲んでいく。
「お嬢様。お疲れ様です。」
「ん。」
ぐってりしているティアラローズの頭をクロードが撫でる。昔は仕事中にクロードはこんなことしてくれなかったけど、休みとかお兄様と3人で過ごすようになってから仕事中でも私が頑張ると頭撫でてくれるの。美少年のクロードからナデナデ…はぅ。幸せだ。
「あれ?お嬢様眠いっすか?」
「ん~…まだ大丈夫だけど…腕が疲れたよ…」
「お嬢様はあんな力仕事しないっすからね。」
机にへばりつくようになってるティアラローズにリオンは苦笑いする。ヘンリーはティアラローズの側に屈む。
「お嬢様。腕をマッサージしますので失礼します。」
「あぅ…ありがとう…。」
ヘンリーはティアラローズの腕をマッサージしてる間ティアラローズはぐってりしたままいたが30分ぐらいしてダニエルが声をかけてきた。
「おーぃ。お嬢様。伸びてるとこ悪いが型どーする?」
「えらぶっ!!!」
「ははっ!ほらよ。選んだら型抜きすっぞ。焼くのはちっせーお嬢様にはあぶねぇから俺がすっからな。」
「わかった♪」
ダニエルから型抜きが沢山入ったケースを受け取るティアラローズは目をキラキラさせている。んー…どうしよぅ。ハートはいるよね♪定番だしっ!あ。お父様の髪キラキラしてるから星と♪…あと一つぐらいならいけるかな?んー?あっ!これにしよっ!四つ葉のクローバー♪確か花言葉は幸運だったはず♪選んだ型を持ってダニエルに持っていく。
「ダニエルっ!これいいかな?」
「おぅ。いいぞ。」
「この型お父様喜ぶかな?大丈夫?」
「ははっ!リチャード様ならお嬢様が選んだら丸でも喜ぶだろ。だが、これでいいんか?動物とかもあっただろ?」
「うんっ!ハートは頑張ってっとか大好きだよ~♪って気持ちのハート。星はお父様のキラキラなキレイな髪でキラキラな星。お父様自体がかっこよくてキラキラしてるし♪あとは、クローバーで幸せを。クローバーって幸運って花言葉だよね?」
「よぅ知ってんな。クローバーだけじゃねぇで、ハートも星も喜ぶだろぅな。ハートなんか特にな(笑)」
「やった♪ならこれにしまーすっ♪」
打ち粉をした台に生地を置き、ティアラローズが生地を伸ばして型を抜きながらルンルンしてるティアラローズはとっても楽しそうで皆ニコニコしはじめる。
「1.2.3…21枚。う~ん…。」
「どうしたんですか?」
型抜きした生地を数えながら首を傾げるティアラローズにマリーは訪ねる。
「クッキー足りないの。」
「足りない…ですか?」
ティアラローズの言葉にマリーも首を傾げる。
「旦那さまに渡すだけでしたら多いぐらいですよ?」
「あ。ちがうの。えっと…あぅ…。」
「どーした?」
「えっとね。ダニエル…焼いてる間にもう一回してもいい?」
「いいけど…焼くのは俺がするしこれも失敗ってこともねぇぞ?…腕大丈夫か?」
「ん~…あと一回なら…大丈夫っ!」
「そーか。なら焼いてる間にもっかいすっぞ!」
「ダニエルありがとうっ!!!」
ティアラローズはニコニコしながらもう1度生地を作り型抜きする頃にはお昼寝の時間がきて型抜きが終わったらすぐに椅子に座ったまま寝てしまう。
「お嬢様はなんでぇこんなクッキー焼いてんだ?」
「わかりませんか…足りないとおっしゃられていました。」
「これ全部リチャード様が食うんか?フリージア様にか?」
「あー。なるほど。はじめて作るってことはそうですかも。」
「では、いくつかの種類の包み紙も準備しておきましょう。」
「そうっすね!可愛いのも綺麗なのもありますし、お嬢様が気に入るのがあるといいっすね!」
「僕はお嬢様を寝室にお連れしてきます。」
ティアラローズが寝た横で使用人達はクッキーの量が気になったが、とりあえず起きてからティアラローズがすぐ包み紙を選べるように準備をはじめた。クロードはティアラローズを寝室に運んだ。
それから、昼寝から目覚めたティアラローズは起きてからすぐに調理場に向かい、綺麗に焼けたクッキーを見て目をキラキラさせる。そして、包み紙を選びはじめたが。
「う~ん。もっと小さいのってあるかな?」
「小さいのっすか?」
「うん!クッキー6枚、クッキー3枚はいるの!」
「それでしたら…こちらの包み紙あたりですね。いかがですか?」
「うん!ありがとうっ♪」
満面の笑顔で包み紙の入ったケースを受け取り、3種類2枚ずつのクッキーが5袋、3種類1枚ずつのクッキーが4袋の可愛らしいクッキーができた。リボンは上手く結べないなりにティアラローズが結んだ。
「できたーっ!!!!」
ぴょんぴょん跳ねるティアラローズを皆優しげに見つめる。数人ほど感動して涙を滲ませてる。
「お疲れ様です。」
「でも、なんでこんな沢山なんっすか?」
「えっとね!これはダニエルに。」
「俺か?!」
「うん!クッキー作り方教えてくれたから♪」
ダニエルはびっくりしながら小さな包み袋を受け取る。
「おぅ。ありがとうな。」
「こっちからは~♪マリー、リオン、ヘンリーの。」
「「「ありがとうございます。」」」
順番に小さな包み袋を渡していく。皆びっくりして固まりながらもしっかり包み袋を受け取っている。
「これは、クロードのっ♪」
残っている大きな包み袋の1つをクロードに渡した。クロードは笑顔でティアラローズの頭を撫でながら受け取る。
「ありがとうございます。ティアお嬢様。」
「うんっ!お母様達にも渡しにいこっ♪」
ティアラローズはフリージア達にもクッキーを配りにいく。はじめて作ったクッキーをお母様に渡したら喜んでくれてぎゅうぎゅう抱き締めくれたよ♪お兄様も渡すとしばらく抱き締めて膝に乗せたまま離してくれなかったの。その後、セバスにも渡しにいって、お仕事から帰宅したお父様にも渡したよ。
晩御飯食べた後に皆半分食べて明日半分食べるって避けてたよ。お父様なんて「勿体なくて食べれないっ!」とか言ってたけど「また作るのでちゃんと食べてね♪」っていったら喜んでくれてたから…たぶん食べたはず。
そうそう、すっかり自分の分を忘れてて、しかも味見すらしてなかったんだけど、それに気がついたお兄様が1枚あーんしてくれたの。ちょっと固かったけど味は美味しかったよ♪固いのは混ぜ方だよね…この体でさささっと手早く作るなんて出来ないから仕方ないよね。みんな「美味しい♪」って言って喜んでくれたの嬉しかったしまた作ろっ♪
これがきっかけでティアラローズの趣味はお菓子作りになりました。勉強がない休みの日には調理場に行きダニエルからお菓子の作り方を学ぶのであった。
そして、ティアラローズが寝た後に家族で集まり、クロードが設置した映像記録魔道具(日本でのビデオカメラみたいなもの)による観賞会が行われたのであった。
クッキーを貰ったリチャードが更に張り切りしばらく先のできる仕事まで終わらせてしまったのはティアラローズ以外の想像通りであった。
映像記録魔道具に魔力を流すと記録した映像が流れる。いくつかあるスイチと日付のダイアルがあり、日付を合わせて魔力を流すと映像が見れ、日付をあわせてからスイッチを押しながら魔力を流すと撮影しはじめる。かなりの時間を保存できる魔道具のために防犯として監視カメラの様にも使える優れもの。
品質によって映像のみ、映像と音声とあるが、クロードが使ったものは音声ありのほうである。監視カメラとして使う場合のは映像のみで価格が安い方を使うのがこの世界では一般的である。ついでに音声がつくだけで倍の値がするして、大きさがコンパクトになればなるほど高くなる。




