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過去の私へ

作者: 氷桜羽蓮夜

一年前の私へ


私は、何をしていたのだろう。


手にした葉書(不合格通知)を手にしてそう思う。


誰が言っていたっけ。


「受験生なら、平日授業後6時間、休日13時間勉強しろ」


信じてた。


聞き飽きるほど聞いたそんな言葉を、信じていたのになぁ。


何でだろう……何でだろう。


努力が足りない?


みんなにそう言われた。


「誰かがお前を抜いたのは、お前より努力したからだ」 


もちろん、こんなにはっきりと言われたわけじゃない。


慰めの言葉と見せかけて、さりげなく毒氷を刺してきたんだ。


本人に悪意があったのかなんて知らない。


でも、私だって努力した。


あなた達(大人たち)を信じて、ただひたすら勉強した。


こんなことになるのなら、もっと……もっと、自分の好きなことをやっていたかった。


何をやっていたんだろう、私は。


努力したら、その分だけ自信を手に入れる。


努力したという事実は、永遠に消えない。


耳障りの良い言葉に、騙されてきたんだ。


「精一杯努力した結果が駄目なのならば、諦めがつく」


それも、事実なのだろう。


でも、私の胸にあるのは……。


「どうして……!!」


諦めなんかじゃない、自信なんかじゃない、誇らしさなんて微塵もない!


あるのは、ただただ漠然とした悲しみと……絶望感だけだった。


時間が経てば、この経験をバネにすれば。


そう言っている人の何割が、それを実現できているのだろう。


努力しても、報われない。


それが、この世界なんだ。


明日もきっと、陽は昇り。


いつもと変わらない世界は、私の気持ちなんて知らないでいつも通り回っていくのだろう。


それは、なんだか自分はいてもいなくても変わらないと言われているような気がして。


私は、未来で何を思っているのだろう。


でも、いつになってもこれだけは言えると思う。


「私は、何をやっていたのだろう」、と。




10年前の私へ



私は、何をやっていたのだろう。


ふと手を止めて、そう思った。


大学受験に失敗し、何度も何度も職を流れた末に辿り着いたこの仕事の手を止めてそう思った。


やりがいもなけれは楽しさもないこの仕事の手を止めて、そう思った。


私は、こんな人生を歩むために高校時代勉強をしていたのか。


教師たちの話を信じ、怒鳴られ椅子や机を蹴られ罵倒されて寝る間も惜しんで何度も何度も倒れながら勉強した末が、これなのか。


時がいくら経とうとも、後悔は消えることなく私の胸で燻り続けていて。


勉強しなかったことへの後悔ではなく、「勉強しかできなかったこと」への後悔が、日に日に強くなっていく。


高校三年のあの夏から、友達も捨て心も捨てて勉強してきたことへの後悔が、私を見つめて嘲笑う。


何で私は気づかなかったんだろう。


何で私は、勉強しか頭になかったのだろう。


特技も何も身につかないままに、私はいつの間にか大学を卒業していて。


今、はっきりと分かった。


勉強だけできたところで、何の役にも立ちやしない。


勉強できない奴は未来がない?


私への皮肉でも言いたいのか、滅べばいい。


バカみたいに笑って毎日を過ごしているのと、使い潰されて死んだ顔で死んでいくのとどっちがいいかなんて、みんな知ってる。


でも、みんな一生懸命死のうとしてる。


心を壊して勉強し、組織に忠誠を誓って使い潰されることを望んでる。


まるで、洗脳されたかのように。


ふざけるな。


一流大学出た人で、人を動かしているのは何割だ。


ふざけふな。


その上に立っている奴は、一体どれほど存在して。


その中で勉強しかできないやつは、一体どれほどいるだろう?


それは、ゼロに決まっているだろう。


人に使われるだけならば、機械のように知識を覚えて。


機械よりも柔軟に、言われたことの知識を弾き出せば良いだけだ。


そんなのが、人を従えられるわけがない。


結局、頭の良い大学へ行こうと努力しすぎた奴は良いように使われて終わるんだ。


だから、勉強だけが全てじゃないはずなのに。


何で、勉強しかできないことを大人たちは求めているのだろう?


何で、学校行って机に齧り付く勉強しか価値がないなんて言うのだろう?


そんなことしなくたって、自分がやりたいことをしながら生活できている人だってたくさんいるのに。


どうして、私は忘れていたのだろう。


身の丈にあった場所にいかなければ、誰もが不幸になるだけなのに。


みんなが辛い思いをするだけなのに。


何で、みんな頑張りすぎているんだろう。


何で、私はこんな簡単なことに気づかず頑張りすぎたんだろう。


もし高校二年に戻れるならば。


もし大学生に戻れたならば。


今度こそ、自分らしく生きようと足掻きたい。


この願いに手が届くこともなければ、叶うこともないけれど。


時計の針が戻ってくれることを、ないと確信しているはずなのに。


どこかで期待している私が、ここにいる。



自作『併交世界』、読んでいただけると嬉しいです!!

異世界に拉致された少年を巡り、様々な思惑と駆け引きが繰り広げられる、何でもありの物語です!!


https://ncode.syosetu.com/n8042fh/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の体験したことや思ったことを素直に書いており、なかなかできない書き方であると思いました。 それから、一つの文章が短く読みやすいと思いました。 [気になる点] 作者が体験したことは理解…
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