第6話:散らばるトライアングラー。<悟夢>
ただ、誰でもいい。
愛がほしい。
そして誰かを愛していたい。
誰かを好きでいないと落ち着かない。
誰かに好かれていないと休まらない。
けど、今ほしいのは。
何故か麻緒梨の笑顔だった。
麻緒梨がそばにいた時間は夢のようでとてもやわらかかった。
いつも不安や落ち着かない気持ちの俺も、麻緒梨といるときだけは不安にならずにすんだ。
何故今ここに麻緒梨はいない?
何故今ここにミヨナがいる?
ミヨナは一人で舞い上がって一人で騒いでいる。
この間なんかいつのまにかラブホの前にいて、“この俺”が“めずらしく”する気になれなかった。
こんなことってあっていいものなのか?
いいや。いいはずがない。けど、こいつ(ミヨナ)とはしたくないんだ……。
俺、麻緒梨が好きだ――…。
メールしても、最近は返信される数が少ない。
すると、痲緒梨と誰か男が笑いながら一緒に歩いてる姿を見つけた。
「っ。」
それを察してか、ミヨナが俺に言った。
「あの二人、付き合ってるんだよ・・・・・・。ね?」
俺はつかつかと歩き出した。
痲緒梨は、俺に気づいて、息を詰まらせた。
「痲緒梨。そいつ、誰?確か痲緒梨今フリーだったよな?」
すると痲緒梨は顔を背けた。
「俺?痲緒梨の彼氏。あんたこそ誰?あ、そっか。痲緒梨の追っかけか?悪いね。痲緒梨は俺がもらったから。」
最高にむかつく事を言う野郎だ。
「それ、本当?」
痲緒梨は、顔を背けたまま動かなかった。
「ねぇ。悟夢〜。こっちは彼いるんだからさ?・・・」
「痲緒梨は、本当にそれでいいのか?」
ちっとも楽しそうじゃない。
あの時俺といた痲緒梨のほうがよっぽど楽しそうだった。
「・・・・・・ごめん・・・・・・。私・・・・・・悟夢君とは付き合えない・・・・・・。」
「は?なに?じゃ、あの顔は嘘だったわけ?全部全部。嘘だったわけ?」
「私はぁ、恋愛依存症だから・・・・・・悟夢である必要ないの・・・・・・。誰でもいいの。私をすきっていってくれれば。誰だっていいの・・・・・・悟夢くんはぁ、その中の1人に過ぎなかったの・・・・・・。」
ゆっくりと痲緒梨はしゃべる。
泣きそうな声で。今にも消えそうで。小さく震えていた。
本当にそれでいいのか?
本当にそれで幸せなのか?
「ごめん・・・・・・悟夢君。もう、何も聞かないで・・・・・・。」
何の音も俺の耳には入らなかった。
周りのすべてが一瞬にして動かなくなって。
音もなくなった。
「わかった・・・・・・結局、俺は都合のいい男だったってことか?」
そう言って歩き出した。
誰の声も俺の耳には入らなかった。
どうでも良くなったはずなのに。
何でだ?
すごく泣きたい気分になるのは。
俺だって最初は誰だって良かったじゃないか。
自分を受け入れてくれる手があれば。
誰だっていいって思ってたじゃないか。
俺には、痲緒梨を攻める資格なんかない。
ないはずなのに。
ミヨナのうっとうしささえ気づかぬまま俺は自分の部屋にいた。
一人で自分の部屋に横になってた。
無力な俺。
無力以外の何者でもない。
ただの自分が、“そこ”にはいた・・・・・・。




