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第5話

 いきなりの爆弾発言の主、それは見るからに只人ではないオーラのようなものを待った男性でした。

 整っている顔からは年は未だ三十前後の様に見えますが心労からか額に刻まれた皺のせいで、三十代半ばにも見えます。


 「っ!」


 そしてその人物の出現にあれだけ激情していたはずの高位貴族も驚愕に顔を染め口を閉じました。

 三十代とは貴族社会の中では未だ若造とそう呼ばれてもおかしくない年齢です。

 だからこそ私は明らかに五十代は越えている貴族、それも高位貴族がそんな態度をとったことに驚き、そして高位貴族の次の言葉に私はその人物の正体が誰であるのかを悟りました。


 「ウルベール殿!何故貴殿がこちらに!」


 その名はウルベール・アリストリア。

 リオールがマートラスという国と親密なつき合いを築こうとする理由とされている三人のうち一人、至高のウルベールと国際的に称されるそれほどの人物でした。


 「あ、貴方が………」


 そして私は父からさんざん聞かされていた人間の突然の出現に言葉を失いました。


 「いえ、少々王子の暴走を止めよといわれまして………シリア様、貴女は王子を婚約者にとは考えていなかったそうですね?」


 「っ!あ、えっと」


 だからこそ私は突然ウルベール様に声をかけられたとき思わず驚いてしまい………


 「あ………」


 ーーー そして王子を婚約者になど一切考えていないということを伝え忘れていたことを思い出しました。


 今まで突然の冤罪を先に晴らそうとしたり、王子達の馬鹿さに気を取られている内に伝え忘れていましたがまずそもそも私は王子と婚約を結んでいません。

 結ぶはずなんてありません!

 ですが周りには王子と私が婚約を結んでいるように見えていたはずで………


 「そんなわけないです!絶対にないですから!」


 そしてそのことに気づいたときとんでもない嫌悪感を感じて衝動的に私はそう叫んでいました。


 「そうだったのか………」


 「当たり前か………」


 周囲の様子から誤解が解けたことを悟り安堵する私に表情を一切変えないながらも頷きウルベール様は口を開きました


 「分かっております。そのことは貴女を大切に思っている協力者から聞いております」


 「えっ、協力者?」


 ウルベール様の言葉の意味が分からず私は尋ねようとして………


 「ふざけるな!シリアは私の婚約者であろうが!」


 ですがその前に困惑を顔に浮かべて叫んだ王子の声がその場に響きわたりました。

 その顔には相変わらず自身の言葉に対する無駄な自身が溢れていて、一瞬私は苛立ちを感じて顔を歪めました。


 「王太子の件もあわせて父上に言われたことなのだからな!」


 「はっ?」


 しかし次の瞬間私は王子の言葉に絶句しました。

 国王と私は直接あったりはしていません。

 確かに伝言などで王子との婚姻をそれとなく勧められたりはしていましたが、それでもこんな強引な手を手を使ってくるとは思っておらず………

 ですが、そう取り乱している私を尻目に至極冷静なウルベールの声が響きました。


 「はぁ、やはり勘違いをしていましたか………王子それはシリア様と婚約したら、王太子になれるという話ではありませんでしたか?」


 「えっ?」


 そしてその言葉に王子の自信に満ちた顔が固まり次の瞬間、血の気が引いてゆきました………







 ◇◆◇






 「ふ、ふざけるな!なんの証拠があってそんなほらを吹く!」


 「そ、そんな、王子は王太子ではない?」


 ウルベールの言葉に余裕を無くしてから王子は今までの余裕を忘れたように怒鳴り始めました。

 そしてその明らかに動揺している態度に表情が一切変わらないウルベールと、衝撃の事実に呆然としているエリーナ以外の心が再度一致しました。


 ………あんたのその態度が証拠だよ、と。


 「ウルベールお前は虚実で周囲を欺いた!」


 しかし王子は未だ自分を信じている人間がいると思っているのか、虚勢を張りながらそう叫びました。

 ………いや、エリーナさえ呆然としているのにどうして信じている人間がまだいるなんて思えたんでしょうか?

 それに何とか自身に見溢れているように見せているつもりでしょうが、顔がひきつりすぎて一切動揺が隠せていないんですが………


 「この王太子である私への侮辱許すことは出来ない!………王族であっても侮辱は許せないことだからな」


 最後にぼそりと付け加えられた言葉、それに私は思わずため息をもらしました。

 ………そんな言い訳を付け加えるくらいなら普通に認めてください。

 というか、真実を告げただけで侮辱って………それならエリーナを私は死刑にしなければなりませんよね。

 いやまあ、これだけ大切な式典を男爵令嬢程度が邪魔したのですから死刑にはなりそうな気はしますが。

 そしてそう私は王子に呆れ果てていましたが、次の瞬間まさかの王子の行動に声を上げました。


 「この私自らの手で処刑してやることが情けだと思え!」


 「王子!?」


 「なっ!?」


 何故なら王子はウルベール様へと、側にいた騎士が王族に強くでれないのをいいことに奪った剣を前に走り出したのです。

 あまりの暴挙に広場内が騒然となり、ロミルも顔に焦燥を浮かべ………


 「鈍い」


 「ぎゃあっ!」


 ーーー しかし次の瞬間王子は心底めんどくさそうにしたウルベール様に蹴られ吹き飛んでいきました………


 「えぇ………」


 思わず私が漏らした声、それはあまりの事態に静かになった広場にに響いていきました………

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