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第24話

「貴様ぁ!」


「ひぃっ、何で!?」


何も考えることなく、ロミルに一方的な同情を押し付けたエリーナは当の本人のロミルによって怒鳴られていました。


「貴様は私の忠誠をどれだけ踏みにじれば気がすむ!」


「え、え?」


そんなことはないのに、今まで出過ぎたことをしたとでも反省していたのか、今までロミルはウルベール様の前でも、王妃様の前でも極力感情を漏らさないようにして、護衛騎士としての役目に徹していました。

けれども流石に限界を超えたのか、エリーナが現れた時から顔を憎々しげに歪めていました。

そしてその感情が今になって爆発したのでしょう。

それは私のことをロミルが必死に思ってくれているというこの上ない証明でした。

だから、私はその光景に必死に自分に何を心配することがあるのかと言い聞かせます。


「っ!」


ーーー ですが、頭からは自分とロミルが結ばれる未来は許されないという、エリーナの言葉が何度も反響していました。


それを聞いた時、私は冷水を頭から掛けられたような気分になりました。

今まで私はそのことを知って、覚悟しているつもりで、全然できていなかったのです。

エリーナの言葉の大元となっている考え、それは恐らく根拠のないただの独りよがりな妄想でしょう。

でも、その言葉は私の胸を容赦なく切り裂いて行って……


「何でよ!本当のことでしょう!貴方も脅されてあの女のそばにいるんでしょ!」


そしてエリーナのその言葉に私は自分の唇を噛み締めました。

そう、それは元から決まっていた当然のことなのです。

私も覚悟して、その上でこの場所に来たはずなのに、なのに未だ覚悟は決まっていない。

そしてそのことに気づいた瞬間、私の胸に堪え難い羞恥と後悔の感情が湧きだしました。


そう、私がこの場所に来たその理由、それは決してどうせロミルが本国でも婚約できないのならば強引に他の人間と婚約を結び、諦めようと考えたわけではないのです。

ただどうしようもなくロミルと自分を結びつけるのを阻む、壁が高くて、耐えられなくてそこから目をそらすそのためだけに私はここに来たのです。


「……気分が悪くなったので、失礼します」


そしてそのことに気づいた時、私はこの場にいることが耐えられなくなっていました。

いえ、ロミルの側にいるのが耐えられなくなったというべきでしょうか。

そして私は早足にそう告げて、その場を駆け出しました。


「ほら、あの女だって図星……」


その私の態度にエリーナが何か勝ち誇ったような表情を浮かべるのが分かりましたが、私には何の反応を返す余裕もありませんでした。


「エリーナ?」


「ひいっ!」


その時、王妃様がその麗しい容姿からは想像のできない激怒のオーラを明らかにして、エリーナの言葉は中断されました。

ですが、その光景にも私は何の反応を返せませんでした。

どうしようもなく、私はこの場から去ってしまいたくて。

そしてある人物から距離を取ってしまわないと自分がおかしくなってしまいそうで。


だから私は部屋から飛び出て、必死に自分の部屋へと向かって走りました。

誰にも会わないそのことを願いながら私はそのまま部屋まで走り抜けようとして……


「シリア様!」


「っ!」


しかし、その手を後ろから現れたロミルに掴まれ、あっさりと私は冷静さを失いました……







◇◆◇







「急にどうされたのですか、シリア様。護衛騎士を置いて行くのは決して他国ではしてはならないことですよ」


そう、私へと咎めるロミルの声には責める感情よりも私への心配が溢れていました。

それはロミルが私を想ってくれているという証で、いつもなら胸が高鳴るのですが、その時の私はその心配を素直に受け取ることができませんでした。


「……そんなこと言って本当は私のことなんて主人でなければどうでもいい存在だと思っているのでしょう!」


「え?」


その私の言葉にロミルは何を言われたのか分からず、声をあげます。

けれども私はいけないと思いながら口を止めることが出来ませんでした。


「惚けないで!貴方は私なんてどうも想っていないんでしょう!私なんて貴方にとっては主人でなければどうでもいいんでしょう!」


そんなことはない、そう分かりながらも私はそう声をあげていました。

ロミルは決して私が主人だからというその理由だけで私の護衛騎士としていてくれるのではないことを。

例えそれが恋愛感情ではないとしても。


「私のことなんて貴方は何とも……」


しかし私は何時もならば少しの失望で済むその事実に今回は耐えきれませんでした。

どうしようもなく、その事実が胸を抉っていき……


「そんなことはないです!」


「っ!」


ですが、その私の状態はロミルのあげた怒声に一瞬冷静に戻りました。

私の言い分に起こっているのか、顔を赤くしてロミルは私を睨んでいました。

そしてその顔に私は息を呑みました。

こんなことを一方的に言われれば幾らロミルであれ、怒っても仕方がありません。


「……いえ、そんなことは思って欲しくないというだけです」


「え?」


しかし、最終的にロミルが何かを言うことはありませんでした。

何かを耐えきったような表情で、そう告げて……


「……どうして」


そしてそのことが私の胸に深々と傷をつけました。

ロミルが私に感情をぶつけなかったのが、私がその程度の存在だと言われたような気がして……


「もう、私1人で大丈夫です!ロミル貴方はリオールに戻っていて下さい!」


「っ!」


ーーー その瞬間、私はそう叫んでいました。


そしてその時私は自分が言ってはいけない一線を超えてしまったことを悟りました。

それはもう戻ることはできない一線で……


「っ!」


「シリア様!」


私にはその場を振り返って部屋へと戻ることしかできませんでした……

更新、遅れてしまい申し訳ありません……

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