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第22話

「大丈夫ですか?」


「えっ?あ、はい!」


少しの間呆然としていた私でしたが、王妃様に声をかけられてようやく正気に戻ることができました。

そして改めて姿勢を正そうとして……


「ロミル……」


「えっ?はい!」


……その時にやっとロミルが私と同じことを思ったのか、固まっていることに気づきました。

ロミル、固まってしまうのは分からなくはないんですが、この場で1人にしないでください……

そしてロミルを正気に戻して私が前を向くと、王妃様がこちらを微笑ましそうに見ていました。


「あら、随分仲がよろしいんですね」


「え、ええっ!?」


一瞬私はその王妃様の態度に不信感を覚えかけて、ですが次の王妃様の言葉に私は冷静さをあっさり失いました。

まさか王妃様にそんな風に茶化されるなど誰が予想できるでしょうか。

そして私はその、ロミルのことを憎からず思っているわけで……

恐らく王妃様は護衛と主としての関係を褒めてくださったのでしょうが、私はそれらの理由で思わず取り乱してしまいました。


「ありがとうございます」


……ですが、それに対するロミルの酷く淡白なものでした。


「ふーん」


「し、シリア様?」


決して別にそれだから何かと言われたら何かあるわけではありません。

ロミルが私のことをただの主人としてしから見てないことくらい分かっています。

でも、それでも、もう少しくらい反応を見せようとは思わないんでしょうか?

乙女に対する反応として明らかにおかしい気がします!


「えっ?えぇ?」


ですが、ロミルはそんな私の心なんてわからず右往左往しています。

その光景に少し私は溜飲が下がる気がしてもういいかと判断して王妃様の方へと向き直りました。

すると王妃様はプルプルと肩を震わせながら顔を隠していました……

えっ?どうしました……

思わず王妃様の態度に言葉を失いましたが……


「き、気にしないでください……」


「え、えぇ、分かりました?」


震えながら告げられた王妃様の言葉に、本人が言うのならと強引に納得しました。

……いや、気になるんですけどもね。


「コホン。では話を戻しますか」


それから少しして王妃様は咳払いして緩みかけていた空気を引き締めました。

そして私も王妃様に合わせて気を引き締めかけて……


「では、詳しい話を教えて頂けませんか?」


「えっ?」


……引き締めたはたから緩んでいきました。

え、どう言う意味ですか?

そう思わず言葉を失った私に王妃様は疲れた顔で言葉を重ねました。


「……ウルベールには詳しい話はシリア様から聞けと殆ど何も聞いてないんです」


……ウルベール様どういうことですか?

その時、私はいつかウルベール様には言わなければいけないことがあると悟りました……






◇◆◇






「なるほど、そんなことが……」


それから数十分をかけて大体の話を私は王妃様に話し終えました。

私の話を聞いた王妃様が頭痛を堪えているような顔でくちをひらきました。


「……本当に申し訳ありません。代表して私が謝罪させて頂きます」


「そんな!王妃様が謝ることなんて……」


思わず私はそう告げましたが、王妃様は黙って首を振りました。


「……いえ、本当に私の責任です。確かに私は王族ではありますが、殆どの権限を有していません。そしてそんな私には彼らの暴走は止められません」


そう告げる王妃様の顔には隠しきれない苦渋の表情が浮かんでいました。

それは私に対する罪悪感で、そして問題を起こすことしかできない王子と国王への怒りでした。

その感情の激しさを感じた私は思わず口を閉ざしました。


「改めて謝罪いたします。申し訳ございません、シリア様。この件に関しては私の力の及ぶ限り尽力させて頂きます」


「ありがとうございます!」


王妃様の言葉、に私は思わず笑みを浮かべました。

王妃様が全面的に協力してくれるというその言葉、それは今回私が欲していた言葉なのですから。

しかし、その時でした。


「王妃様、その女に気を許してはいけません!」


「えっ?」


ーーー 突然その場に、聞き覚えのある女性のものらしき金切り声が響きました。


突然の展開に、私もあの王妃様までも顔に驚愕を浮かべました。

一体何が起きたのか、私は分からず声のした方向へと顔を向けて……


「えっ?」


その場にいた人間に思わず言葉を失うことになりました。

その声の主、それは下女でした。

その手にあるお茶の乗ったカートを見る限り、恐らく仕事中なのでしょう。

けれども私には下女に罵られるようなことをした覚えなど無くて……


しかし、リオールの王女である私に対して一切遠慮することのない叫びが私のある記憶を呼び起こしました。


それは、あの広場で王子と共に私へと冤罪をかけようとしていたそんな人物で……


「え、エリーナ?」


思わずそう言葉を漏らした私に、下女はやけに偉そうに胸を張って口を開きました……


「ふん。ようやく分かったの?」

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