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第21話

「では、後数十分後にはこの部屋に王妃様がいらっしゃるので」


「えっ?」


「では後は頼みました」


「えぇ!?」


ウルベール様と話がついたその後、私はそんなあまりにも一方的な言葉とともにこの部屋に待機することになりました。

……いやウルベール様、仕事が早いのは結構なのですが、それでもあまりに急すぎはしませんか?

私は内心ウルベール様に対する不満を溜め込みつつも、それをこの場にいない人間に告げられるわけがなくぐっと飲み込むことになり………


「本当にウルベール様は人の都合を……」


「……シリア様、もうその辺で口を噤んでいた方が」


「ねぇ!ロミルもそう思いませんか!」


「えっ?あ、はい!」


ませんでした。

普通に考えて幾ら何でも非常識すぎる気がします!

そもそも今日私達が呼び出されたことさえも突然だったのに、さらに人に了承をとることなく予定を増やすなんて!

もちろん、次にいつ国王が手を出してくるのか分からない、そんな不安はわかります。

ですが、それでももう少し前もって連絡ぐらいはして欲しかったです!


「そうは思いませんか、ロミル!」


「……ハイ。ソウデスネ」


そしてその不満を私はロミルに2人だけの部屋の中、ぶつけていました。

正直、本人にも一言言いたい気分ですが、居ないのでそれは出来ません。

だから私は2人きりである内に溜まりに溜まった不満を解消するべく、いつのまにか虚な返答を返すようになったロミルに対して言葉を怒涛の勢いで重ねていき……


「えぇ、本当に。ウルベールにはもう少し人の都合を考えて欲しいものですわね」


「えっ?」


ーーー 突然後ろの扉の方向から何者かの声がその会話に参加してしたのはその時でした。


その声の主、それはこの部屋に入ってきた時点で確定したもの同然でした。

何せこの部屋に来ると言われていたのは、王妃様その人だと私はウルベール様に告げられていたのですから。


だから私は王妃様に愚痴を聞かれたということに一瞬で顔を青くし、振り向いて……


「お、お見苦しいところを見せてしまって……え?」


……そしてその場にいた女性の姿に言葉を失うことになりました。


「あら、気にしてなどいませんわ。私も同じことをウルベールには思っておりますので」


しかし、その私の驚愕にも女性は口元に浮かんだ優雅な笑みを崩すことはありませんでした。


「そういえばまだ、名乗っておりませんでしたね。私はセレーネ。マートラス王妃セレーネです。以後お見知りおきを」


そしてその言葉にようやく私は目の前の女性が王妃様であることを悟りました……








◇◆◇








話は変わりますが、リオールの王妃、つまり私のお母様は酷く見目麗しい人でした。

……でした。

私が態々過去形にした訳、それは決して私がお母様を嫌っているわけでも、何らかの不幸な事故が起きた訳ではありません。

そして三十代であるお母様ですが、決して老けたと言うわけではありません。

恐らく今もお母様は化粧をすれば美しく整った容姿を見せて頂けるでしょう。

……化粧さえしてくれれば。

リオールにはマートラスのような女性差別は存在しません。

いえ、数百年程度前には存在したと聞いたとこはありますが、今はもうその片鱗も感じることはできません。

そしてそのせいで王妃であるお母様も仕事漬けの生活を送ることになり、この数年私はお母様の着飾った格好を見たことはありません。

もちろん広場などではきちんと着飾っているのでしょうが、それでも何時もはそんな暇など存在せず……


そしてだからこそ、私はウルベール様のお話を聞いた時王妃様に抱いたイメージはお母様でした。

もちろんそれは勝手な私の想像でしかありません。

王妃様は未だ子供もおらず、年も未だ20代前半なのですから。


「どうしましたか?」


ーーー ですが、それを踏まえても王妃様はあまりにも美しすぎました。


真っ白な、お母様どころか私さえも凌駕した肌に、愛らしい目。

その外見は少なくとも私と王妃様は五年以上の年の差があるのにも関わらず、私などよりも遥かに若く見えます。

そしてなによりも信じられないのはその身に纏う雰囲気でした。

ウルベール様から聞いた話では、王妃様は殆どお飾りのような王妃という立場からかなり動いていたと聞いています。

けれども今私の目の前に立つ王妃様からは全くその様子を感じることはできませんでした。

酷く美しい、目の前に立つ王妃様からはそれだけしか私は感じることができなかったのです。


そしてそれは王妃様は完璧に外側を繕っているということで……


「……いえ、大丈夫です」


……その時、ようやく私は真の意味でお父様が王妃様の存在でマートラスへの戦争を辞めた理由を悟りました。

こんな相手と戦うなど、私は絶対にお断りです。

震える声で王妃様に返答しながら、私はまるで自分が狡猾な蛇の舌の上にいるのかのようなそんな、錯覚に陥っていました。


……いや、何でこの国は国王は全然駄目なのに、こんなに優秀な人が集まっているんでしょう?


そしてふと私が頭に浮かべた問い、それに答える人間は当たり前ながらいるはずありませんでした……


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