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第17話

 国王との思い出したくもない会談を、私は何とかその日は無事に切り抜けることに成功しましたが、ですがそれですべてが終わりはしませんでした………


 「………ウルベール様はもう私を助けることは出来ないと」


 国王との会談の翌日、ウルベール様に呼び出された私はそう思わず言葉を漏らしました。

 それは昨日の時点で覚悟はしていたことでした。

 その上で私はウルベール様の名前を使ってあの場から逃げることを選択したのです。

 ですが覚悟をしていても面と向かって言われると衝撃を隠しきることは出来ませんでした。

 何せ今まで私たちはウルベール様のおかげで何とか国王の魔の手から逃れてきたといっても過言ではないのですから。

 けれども認めなければならないことだと私はそう認めようとして………


 「本当にもう無理なんですか?」


 ですが口からでたのはそんな未練でした。


 「非常に不本意ではありますが、どうすることも出来ないでしょう」


そしてそんな未練はウルベール様によってあっさりと否定されました。

その時ウルベール様の顔に浮かんでいたのはいつもと変わらない無表情でした。

その表情はより一層どうにもならないことを示しているような気になって私は思わず唇を噛み締めました。


ですが、未だウルベール様の言葉は終わってはいませんでした。


「しかし、次の手は打っておりますのでご安心ください」


「えっ?」


ウルベール様の続きの言葉、それに思わず私は言葉を失うことになりました。

それは驚愕でも、不安からでもなく、堪えきれなかった喜びによる反応でした。

ウルベール様の告げた次の手というものの中身、それを私は詳しく知りません。

それどころか、現状はウルベール様がもう私達に協力することが出来ない、そんなあまりにも痛い損失しか私達は知らないのです。


ですが、そんな不安が吹き飛ぶほどの力強さがウルベール様の安心してくれと言った言葉の中には込められていました。


決してそれはウルベール様の言葉が自信に満ち溢れていた、そんな訳ではありません。

ウルベール様の言葉と表情はいつもと変わらない無表情でした。

ですが、それでもあのウルベール様が安心してくれと安易に口にする訳が無いのです。

つまりウルベール様の告げた次の手というのは、ウルベール様が自信を持って私達に勧められる、そんな手であるのです。

それは今まで重なる不幸に見舞われてきていた私達にとって、まさに希望の光と言っても過言では無いものなはずで……


「王妃様に助けを求めるのが良いかと」


「えっ?」


しかし、次の瞬間ウルベール様の言葉に私は言葉を失うことにありました。

……もしかしてウルベール様、その王妃様ってあの王妃様では無いですよね?







◇◆◇






私の懸念するその人物、それはお父様が有能だとそう認めた3人のうちの最後の1人でした。

その身分は現マートラスの王妃である、セレーネと呼ばれる女性。

ですがその人物について私はリオールの王女でありながら殆ど知りませんでした。

お父様にも、ただあの王妃は有能だとしか教えてもらえず、彼女の容姿さえも正確な伝えを聞いたことがありません。

本当に謎の多い方で、ですが世間一般的にはある噂が流れていました。


それは現マートラスを破滅に導く王妃は毒婦で、自身の父親をも権力を握るためにマートラスから追放したのだと。


その話は決して全てが真実では無いでしょう。

実際、破滅に導く毒婦というのは、マートラスの国王が名君であるという誤解に基づいただけのデマでしょう。

名君と呼ばれている人間がいるのに、マートラスはそこまで発展しない、それどころかあらゆる所で問題を作っている。

その理由はあの王妃に違いないという。

私も当初はその噂を信じていたりはしましたが、もちろん今は全てデマだったことをわかっております。


けれども、父親を追放したというそのことに関しては見逃すことはできませんでした。


それはかなり信憑性の高い噂でした。

というのも、彼女の父親はマートラスでも一番の貴族の名家で、なのに今はマートラスにはいないのです。

しかもマートラスから追放された理由、それは長年の横領などの罪が全て明らかになったというもので、明らかに身内が暴露したとしか思えないような内容だったそうなのです。


そして、その一族で唯一マートラスに残っているのがかの王妃だけとなれば、誰にだって何があったのかは想像できるというものです。


私にとって父親を追放する、それは理解のできないものでした。

横領をしていたというその行いを聞く限り、決して全て何も悪くない人間ではないのでしょうが、それでも追放はやり過ぎにしか思えません。

恐らく、これはお父様と仲のいい私だからこそ、理解できないだけかもしれません。

けれども、本当に王妃の人間性について問題があるのではないかというのが、国際的な認識で、そしてそれは私も同じでした。


「その、王妃と言うのは……」


そして私はウルベール様程の人間が言いまちがえている可能性が限りなく低いことを知りながら、そう口を開きました。

ウルベール様が実は国王の妾を、王妃と勘違いしているだけだと、そう願う私の希望は……


「王妃といえば1人しかいませんよ」


「……そうですよね」


……ウルベール様の言葉にあっさりと霧散して行きました。

更新遅くなり申し訳ございません。

次からお昼更新で固定しようと思います!

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