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第12話

ウルベール様からの話が終わった後、私たちは有無を言わさずとある一室に案内されました。

それは酷く豪華な、恐らく客室らしきところで、そこで私達は座らさられ、国王の登場まで待機することになり、そしてその待ち時間はどんどんと私の心は重くして行きました……

しかも何故か国王が現れるという予定の時刻を過ぎても誰かが客室を訪れる様子はなく、さらに私の中で緊張が高まって行きます。

……本当になんでこんなことになったんでしょうか。

馬鹿すぎる王子に、そして同じくらい考えなしだと聞く国王。

なんで私は続けざまにこんな人間達と関わることに……


「……シリア様、大丈夫ですか?」


現状を嘆く私の顔色に気づいたのか、ロミルの心配そうな言葉がかけられました。


「……えぇ。ありがとう」


その唯一の味方であるロミルの存在に私は心が安らぐのを感じます。

ですが最初、ロミルのお供はこの部屋は最初国王と面会するからと断られかけました。

なんとかウルベール様のお陰……というかウルベール様に許可を頂いたという嘘で室内に入れましたが、護衛騎士を室内に入れないというのは明らかに異常な事態でした。

私はマートラスに入国するに至って決して多くはありませんが護衛をつけています。

もちろんその護衛達は四六時中私の護衛をするわけにはいきませんが、ですが護衛騎士であるロミルは違います。

他国に王女である私の護衛騎士として同伴しているロミルは実はかなりの権限を有していて、他国で動くときは夜を除いてほとんど私と一緒にいます。

それが王女の権限を守る護衛騎士という存在なのです。

つまりそのロミルを私と引き剥がそうとする国王の行動は今から何か私、つまり王女の権限を侵害する行動をすると言外に告げていると同等なのです。

……本当に何故こんな馬鹿ばっかなんでしょうか。


「おい、何故騎士がここにいる!」


「えっ?」


そしてそう思わず私がため息を漏らしたその時でした。

突然ノックもなしに何者かが現れ、そう告げたのは。






◇◆◇






突然ノックが開けられた時、私は一瞬何が起きたのか分かりませんでした。

当たり前です。

普通、客室で客を待たせているときは挨拶をしてから扉を開けるのが普通です。

なのに挨拶どころか、いきなり扉を開け怒鳴られるなど想定外にも程があります。


「っ!」


しかしそんな私の驚愕は突然入ってきた人間の容姿に消え去りました。

そこに立っていたのは酷く肥えた人間でした。

脂ぎった顔に、やけに自身に溢れたあの王子と同じ目を持った人間。

恐らくこの場所に入って来るというのは国王であっているのでしょうが、私は一瞬信じられなくて思わず言葉を失います。

確かに私は覚悟をしていました。

名君だと思っていた人間は実はただの馬鹿であることをちゃんと理解しました。

いや、理解したつもりでした。

ですが目の前の人間だけはどうしても認めることはできませんでした。

……さすがに酷すぎはしませんか?

何で私はこんな人間を名君だなんて思えたのか……


「おい!この私がマートラスの国王だと知って黙っているのか!」


しかしその私の思考は国王の怒声によって中断されました。

そして正気に戻った私は反射的に口を開いていした。


「リオールでは護衛騎士は決して周囲から離してはいけない存在です。ですのでウルベール様にご相談させて頂き、同行の許可を得させて頂きました」


私はそう国王に申し訳なさそうに説明しながらも、内心では全く罪悪感など感じていませんでした。

……いや、何でこんなにも私が怒鳴られなければならないんでしょう。

そもそも遅れてきたことに対する謝罪もありませんよね。

もうかなり時間が経っているんですけども……


「……ちっ!またあいつか!」


そしてその私の言葉に国王は汚らしく顔を歪めました。

その顔には隠しきれない苛立ちが込められていました。

私はその顔に一瞬疑問を覚えます。

というのも、ウルベール様はかなりマートラスへの貢献度が高いそんな人物でなんで国王である目の前の男がこんなにもウルベール様を目の敵にするのか分からなかったです。


「……確かにあいつは少しばかり有能かもしれない」


そしてその私の内心を読んだわけではないでしょうが、ちょうど国王が疑問に答えるかのように話し始めました。


「数回の反乱を納め、急に激怒した頭の固い他国の王族の怒りを抑え、そして国内で有効な政策を制定してはいるが……」


「えぇ……」


私は国王の口から語られたウルベール様のあまりにも優秀すぎるその能力に言葉を失いました。

いや、本当にウルベール様は何者なんですか……

実は身体複数あったりしませんよね……

化け物じゃないですか……


「だが、あいつは国民のためになどと自身の人気を集めるだけのために、反乱の後勝手に課税を軽くしたっ!」


「はっ?」


そしてだからこそ、私は国王の次の言葉の意味がわからず言葉を失いました。

いや、明らか反乱抑えるために課税を軽くするのは当たり前ですよね。

というかしなければまた反乱が起きて、さらに鎮圧のための手間でそれ以上のお金が飛ぶと思うのですが、単純な計算もこいつはできないんでしょうか……


「つまりあいつは自分のことしか考えていない屑だ!」


自信満々に、全く理解できない謎理論を繰り広げた国王の姿に私は切実にあることを望みました。


もう嫌な予感しかしないんで、帰らせてください……


そしてその願いがその願いが叶わないだろうことを私はこれまでの経験から悟っていました……

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