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もう好きにしてくれ

 家に戻った後も、イアンはミランダに言われた言葉を繰り返し反芻しては考え込んでいた。

 自分はもうすぐ三十七歳になるのに対して、シーヴァは十七歳になる。

(あいつも物好きな……。若くて綺麗でしっかりしている癖に、何で俺みたいなくたびれた中年男なんかがいいって言うんだ……)

 どんなに考えても分からない。しいて言うならば、家族の愛情と男女の愛情を混同しているんじゃないか。だが、それに関しては、イアン自身も言えた義理ではないような気がする。

 結局のところ、シーヴァの結婚話が浮上する度に理由を付けて断るのは、彼女を手放したくないからだ。自分のモノにすることも出来ない癖に、他人に渡すことも出来ない。何て狡い男なんだ。

 そんなことを悶々と考えていたら、寝る時間になってしまったのでイアンはベッドに横たわる。程なくして、マリオンが部屋に入って来た……、と思ったら、またもやシーヴァがやって来たのだ。今度は、わざわざ自分の枕を両腕に抱えて。

「……シーヴァ……」

 イアンはむくりと起き上がると、呆れたような困ったような、何とも言えない複雑な表情を浮かべたが、そんな彼に構わずシーヴァはベッドの中に入り込んで来た。

「シーヴァ……、何度も言うが、マリオンが来たら……」

『マリオンなら、今日から私と部屋を交代したから』

「はぁっ?!お前ら、何を勝手な事……」

『あとミランダから、《イアンさんは良い人だけどちょっとヘタレだから、とにかく押しの一手ね》って背中を押されたの』

(ミランダめ……、余計なことを……)

『でも、安心して。私の方からはイアンの寝込みは襲わない。イアンが襲ってくるまで待つ』

「はあぁぁぁぁ?!」

 何を言っているんだ、こいつ。言っている意味を分かっているのか。

 混乱しているイアンに、シーヴァは蔑むような冷たい視線で一瞥する。

『ちょっと静かにしてよ、マリオンが起きるでしょ。じゃ、そういうことだから、おやすみなさい』

 シーヴァはイアンの唇にさっと軽くキスをすると当然のようにイアンの隣に身を置き、毛布を引っ被って横になってしまった。

「ああぁぁぁ……。もう好きにしてくれ……」

 イアンは情けない声で力なく呟くと、シーヴァに背を向けて再びベッドに横たわる。すかさず、シーヴァは彼の背中にそっと身を寄せる。

「……シーヴァ……」

 注意を促そうと振り返ったイアンだったが、彼女の安心しきった穏やかな寝顔を目にした為、「まぁ、これくらいなら……」と苦笑を漏らすだけに留めたのだった。

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