馬鹿王子6
6話目。
もうろうとする意識の中で、声を聞いた気がした。
―――――――レオ兄、エルは大丈夫だよな?
いつもの発作だから大丈夫。
―――――――俺の心臓、帰ってくるよな?
意味が分からない。ああ、馬鹿王子だからか。
そう思っていると、体がふわりと浮いた。
―――――――全く、父上も父上だ。子どもの情操教育まで放棄しやがって。
えっと、それは私も同感です。
心の中でつっこんでいるうちに、何か柔らかいものの上に寝かされた。
―――――――レオナルド様。
―――――――どうした。
あ、兄様の声。
―――――――それが・・・・・。
ひそめられた会話は、私の耳には聞こえなかった。体を起こしたいのに、私の体は馬鹿みたいに重くて、指一本上がらない。ああ、馬鹿王子と言えない。私の体も馬鹿なのだ。ただ息をすればいいのに、ヒューヒューと風が抜けてしまう。
―――――――気管支炎の患者はここか!!
意気揚々と聞こえてきた声。
―――――――何をしている!!まずは服を緩めるのが基本だろ!!
そういって、首元にかかる手。
あ、やめて!!ばれる。いくら私が細身でも、服を緩められたらばれる!!
男しかいない軍に入るには、当然、男装する必要がある。もちろん、私も例外ではない。
――――――ローランド、今から見ることは、お前の胸のなかに秘めておけ。
レオナルド様、さすがです。
――――――そのほうが、おもしろいものが見られるからな。
前言撤回。やはり、この国の王子だ。一癖も二癖もある。
こうして、私の秘密をしる人間が増えるのだった――――――――。
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「ほう、あれは女だったか」
テントの影、黒ずくめの男がにやりと笑う。
「男装させてそばにおくとは、あの狂王子もなかなかのものだな」
今回は失敗したが、次こそは―――――――。
「我らは獲物を逃がさない。狂王子、その命、必ずいただく」
闇の中、男の姿はいつのまにか消えていた――――――――。




